嘘つきが嫌いな嘘つき (ページ12)

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Ⅶ 私の能力、彼の秘密ページ12

ああ、する事がない

ここまで来るとやっぱり私の趣味は仕事、恋人も仕事、果てはプライベートも仕事で埋め尽くされていると認めざるを終えない。

とりあえず…喫茶店巡りでもしようか…？いや、でも知ってる店はあのポアロくらいしか…

ぐるぐると暇つぶしを考えていると、何となく私の歩く歩道の前方から悲鳴やら人が倒れる音のようなものが聞こえてくる。

その物々しい騒ぎは波のように私の所まで伝わってきた。

「ひ、引ったくり…？誰か捕まえれないの……？！」

「いくら腕に自信あってもナイフ持っちゃあ誰も立ち向かえねぇよ…！！」

…成る程、こういうものは大抵勇気ある人が2、3人で逃走を阻止するものだが、刃物を持っている以上一般市民には手に負えない。

……。…、良いよね。

私警察だし。全身真っ黒スーツコーデだけど。

周りを歩いていた人達は皆私の後ろの方に逃げている。ここに立っているのは

「おらぁ！どけ！！そこの女ァ！！！」

＿＿＿＿私だけ

「危ねぇぞ姉ちゃん！！」

「逃げたほうが良いって！」

後ろの人達があまりに騒ぐものだから、反対側の人達まで立ち止まって此方を見ている人もいる。

…あれ、丁度反対側ってポアロじゃん…あれ、客も店員も出てきてるけど、いいの…アレ

「お姉さん！！逃げて！危ない！！」

「さっさとどけ！怪我したくなかったらなぁ！！」

…君もいたんだよね、まぁそりゃそうか…家店の上だし。

引ったくり犯は、走るのをやめて私に威嚇をしてくる。

私に刃先を向けるだけで、人を傷つけるだけの度胸がない。

「ふっ………生温い。その刃物は飾り物なの？」

「っ？！…んだとこのアマ……そんなに刺されてぇんなら………………お望み通り刺してやるよぉ！！！」

止めていた足を、今度は私を刺すために動かす。
対して私は準備運動程度に首や肩を回して小気味いい音を鳴らしていく。
そうしている間にもだんだん短くなる引ったくり犯との距離。
動く気配がない私に周囲の人間は焦り、悲鳴をあげる。その様子に恍惚と、気が狂ったようにニタリと笑う犯人。

「そんなんで刺されるくらいならこんな所に立ち止まってないよ、ばーか」

私の体に刺さる、という寸前で相手の手首を、もう片方で胸倉を掴み走っていた勢いに乗せて背負い投げをする。

「うぐあぁっ！！っぐぅっ、」