139話 一着の ページ41
「服…どうしようかしら」
「A」
「え、あ、ああ…、マチ」
シズクがとっくに過ぎ去った後も出口をぼーっと眺めていたAに後ろから声をかけたのはマチだった。
「どうしたのA?大丈夫?」
マチはぼーっとしていたことを気にかけてくれたようだった。
問題ないことを伝えると、マチは今夜の仕事着について話してきた。どうやら彼女を含むその他の団員は新しい服を新調(盗む)するようでAも一緒に行くかということだった。
「そうね…私も行…、あ…、いえ私は行かなくていいわ」
いつもどんなにいい服で着飾っても仕事柄一度来た服はお釈迦になってしまうことが多く、ほぼ毎回新しい仕事着を見つけに行くのだが今回ふと自室のクローゼットにある一着のドレスがAの頭をよぎった。
「そうかい、わかったよ。またもしも必要になったら声をかけてくれればいいから」
マチはAの返事を聞くと彼女も自室へ帰っていった。
いや、もしかしたらクロロの部屋へ行ったのかもしれない、流星街でのことを報告に。
流星街では自分が想像していた以上に色々なことが起こって少し裏の住人としての顔から離れていたAは気持ちを切り替えるために自身の頬を軽く両手で叩いた。
今は夕方、あと数時間でアジトを出発しなくてはならない。
自分を着飾ることとバックアップのための情報整理が必要だ。
やることを決めたAも自室へ戻るために足を出口へ向けた。
錆びれた扉をゆっくりと開くとしばらくぶりに再開する自室と目が合う。
我ながら本当に飾り気がない簡素で質素な部屋だとAは思った。必要最低限の物しかない。
蜘蛛に入団する前と今とでは随分志向が変わったようだ。
クローゼットの中もそうだった。
Aは部屋へ入るなり片隅に置かれたクローゼットを開けた。
久しぶりに開けたクローゼットからこもった空気が流れだして鼻を刺激した。
そんなに枚数がない服たちをかき分けてAは一番端の奥の奥から一着の黒色のドレスを引っ張りだした。
漆黒に輝きながらどこか上品さと色気を漂わせるそのドレスと対面するのは本当に久しぶりのことだった。
しばらくドレスと見つめあった後「やっぱり…」と言ってAはドレスを再びクローゼットの中へ戻そうとした。
しかしほぼ戻しかけた時、ふとあることを思い出した。
108人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ダイヤ - 喘ぎ声 (2022年8月5日 22時) (レス) @page41 id: 27e98af43e (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ピポ助さん» コメントありがとうございます!旅団のみんなと夢主さんの理解が繋がる日が書けるといいなと思っているので、また更新したら覗きにきてくれると嬉しいです^^ (2019年10月29日 8時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
ピポ助(プロフ) - コメ失礼します!この作品すっごく好きです、、夢主健気、、、旅団のみんなもわかってあげて欲しい!!続きが楽しみです!更新待ってます、頑張って下さい! (2019年10月29日 1時) (レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - なにもしたくない系女子さん» そうなんですか!ありがとうございます^^引き続き楽しんでいただけると嬉しいです^^ (2019年10月27日 22時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
なにもしたくない系女子(プロフ) - 更新待ってました!お疲れ様です! (2019年10月27日 18時) (レス) id: 0b49310475 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ミカヅチイヴ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年10月26日 22時