122話 偽善者 ページ24
この子はここに置き去り、いや捨てられてどれくらい経つのだろうか。
お腹はミルクで満たされてなければならないのに、この子の貧相で痩せ細った体からはとてもその状態が維持されているとは思えない。
それなのに母親を呼んでいるのか懸命に泣き続けていた。
Aはその子の頭に触れようと手を伸ばした。
しかし触れる直前で手を止めた。
こんな大勢の人の命を潰してきた私の手が触れていいものなのかと。
だがAが止まっている間も赤ん坊は泣き続けていた。
かわいそうに、寂しいだろうな、辛いだろうな。
そう思ったら自分なんかの手でもよければ…と小さな頭に触れて一回優しく撫でてやった。
すると撫でられた赤ん坊は一瞬驚いたようにピクッとしたが、徐々に泣くのをやめて満足そうに笑った。
「あら…泣き止んでくれるの？」
そんな様子を見て、Aからは悪意の一切ない笑みが自然にこぼれた。
そのまましばらく頭を撫で続けてやると、その赤ん坊は大きな瞳でAの顔を見るとニコッとこれまた満足そうに笑った。
そしてニコニコとしながらスーっと眠りに落ちるかのようにゆっくりと目蓋を閉じた。
ゆっくりとした呼吸に変わり、スースーと寝息を立てた。
何度か呼吸をすると次第にその音は小さくなっていった。
どんどんどんどん小さくなる。
そして気づけばいつのまにかその寝息の音はスーっ……とこの世から消えてしまった。
Aは赤ん坊の鼻の下に手をかざした。
もう息が手に感じられない。
「逝ってしまったのね…」
Aは自分が散々ダメにしてきた命の儚さを学んだ。
Aは赤ん坊に向かって手を合わせようとした。
しかし、ここでまた躊躇った。
今回違うのは、頭を撫でたときとは違ってもう行動に移さなかったことだ。
Aは合わせかけた手を下ろした。
こんなに綺麗な命に汚い自分が干渉してはいけないと思った。人を沢山殺めてきた自分にはそんな手を合わせる権利はない…やめようそんな思いだった。
「…、おやすみなさい…天国へいくのよ」
目に見えないものは基本的に信じていないAだったがこの時ばかりは天国があることを祈ったものだった。
そして立ち上がってみるともう空は赤から黒色へと向かっていた。
「ああ…夜が来たのね…夜の人間に戻らなくちゃ…だって私は盗賊なんだから…」
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ダイヤ - 喘ぎ声 (2022年8月5日 22時) (
レス) @page41 id: 27e98af43e (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ピポ助さん» コメントありがとうございます！旅団のみんなと夢主さんの理解が繋がる日が書けるといいなと思っているので、また更新したら覗きにきてくれると嬉しいです＾＾ (2019年10月29日 8時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
ピポ助(プロフ) - コメ失礼します！この作品すっごく好きです、、夢主健気、、、旅団のみんなもわかってあげて欲しい！！続きが楽しみです！更新待ってます、頑張って下さい！ (2019年10月29日 1時) (レス) id: 4111e46406 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - なにもしたくない系女子さん» そうなんですか！ありがとうございます＾＾引き続き楽しんでいただけると嬉しいです＾＾ (2019年10月27日 22時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
なにもしたくない系女子(プロフ) - 更新待ってました！お疲れ様です！ (2019年10月27日 18時) (レス) id: 0b49310475 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミカヅチイヴ x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年10月26日 22時
