59話 惨状 ページ10
Aは直ぐに回避ができるように背中を扉につけてからわずかに開いた。そして肩越しに部屋の中を覗き込んだ。
「んっ…やっぱり…ね」
Aは中に誰もいないことと、だいたい想像していた部屋の状況を確認すると、向き直ってから改めて扉を大きく開けた。
「ねえ!お姉さん!中はどうなってるの?!お父様とお母様は?!ねえ!」
Aが扉と部屋の境目で仁王立ちしているせいで少女はまだ状況がわかっていなかった。
Aは振り返って今にもパニックを起こしそうな少女を見下ろした。
「中…あなたは見ない方がいいわよ。」
Aはいつものクスリという笑顔を見せず真顔で言い放った。
その顔はAの仕事をしている時のさめた顔でとても冷たかった。
「さあ…一旦ここを離れましょう」と言ってAは扉を閉めかけた。
すると「どうして離れようなんていうの?!閉めないでっ!」と発狂ぎみに少女は叫んで、Aの体を強引に押しのけて部屋に入った。
当然Aは子供の力などで押しのけられるほど弱くはないが、ここはそのまま身をひいた。
「お、お父様…?お、お母…様?」
少女は室内の悲劇のあまり呆然と立ち尽くした。
世話係などはもちろん、少女の父親と母親は無残にも血を流し床に倒れていた。
血の赤黒い色と、臭いから父親と母親は少女が家を去ったとほぼ同時に殺されたと言っていいだろう。
少女が言っていた若い男は、Aを殺せたら親を返してやろうと約束をしていたが、どうやらそいつにはハナから約束を守る気なんてさらさらなかったようだ。
大体こんな子供に殺しを頼む時点で期待はしていなかったのだろう。
おそらく、単に蜘蛛への…いや私へのちょっかいか…とAは推測した。
「でも、誰…」
Aは少し考え込んでしまってからハッとした。少女の様子はどうだろうか。
まだ驚きのあまりか悲鳴すらあげない。
「私、見ない方がいいとは忠告したわよ」
「あ…ああ…お父様?お母様?」
Aの声が聞こえていたのか、いなかったのかそれはわからないが、少女は小刻みに震えながら床に伏している両親にゆっくりと歩み寄った。
「ねえ起きて…私、帰ってきたよ、ねえ…
どうして起きてくれないの?…ああ、そうだ…救急車、救急車よばなくちゃ…
お姉さん救急を呼んで…」
少女は眼球をこれでもかと言わんばかりに見開いたまま振り返った。
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ミカヅチ イヴ(プロフ) - あやはさん» ありがとうございます^^あやはさんも受験勉強頑張ってください!^^ (2019年8月16日 10時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
あやは(プロフ) - すごくいいところに来ててわくわくしてます笑受験勉強の息抜きにすごく助かってます!これからも頑張ってください! (2019年8月15日 22時) (レス) id: df4b2b1b15 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ゆっずーさん» 応援ありがとうございます^^これからも読んでもらえると嬉しいです! (2019年8月7日 19時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっずー(プロフ) - フェイタンもフィンクスも皆面白い笑笑更新お疲れ様でした!また頑張ってくださ〜い! (2019年8月6日 23時) (レス) id: 9ee8873612 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ひがんさん» なるべく毎日更新頑張りますね! (2019年8月2日 22時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミカヅチイヴ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月22日 12時