95話 泉は枯れた ページ47
薄暗い部屋に1人になったAは久し振りに孤独という感情を味わった。
寂しい…だけど今思えば辛いという思いの方が強かった気がするとAは語る。
両腕を天井めがけて伸ばしてみる。
たいした傷もなく特に酷い痛みも感じられなかった。
一瞬自分が生きているのかと不思議に思ったが心が痛いと叫ぶのでああ、生きているのかと思ったものだった。
「幸(さち)のない手だ…」
何も掴むことのできない我が手だと悲しみを覚えながら天井に向けていた手のひらをゆっくりと自分の顔へ向ける。
「私が念を使わなければ…」
小刻みに震える手を握りしめた。
自分の弱い部分を握りつぶすように…。
自分の決意を固めたかのように…。
この時、Aの涙腺も握りつぶされたかのように絞り出てきた一筋の涙が頬をつたった。
涙はスーっ…と静かに静かに落ちていき、何事もなかったかのようにベッドのシーツへと消えていった。
「A?泣いてるの?」
入り口にはいつのまにかフィンクスから報告を聞いたシャルナークが立っていた。
Aは天井に顔を向けたままだったが視線だけシャルナークによこした。
「泣いて……ない」
Aの瞳には眉を下げて心配そうにするシャルナークの顔がうつっていた。
「泣いてないの?本当に…?でも、頬に涙の跡が残っ「泣いてない」
Aは頬に残る涙の跡を擦りとって隠したりはしなかったが、シャルナークの言葉を遮って泣いてないと断言した。
そしてシャルナークから視線を外し、再び上を向く。
「泉は枯れた。」
「え…?」
シャルナークは聞き返したが、何度聞いてもAは口を閉ざしたままでこれ以上何も説明はしてくれなかった。
ただ唇に力が込められた彼女の姿は、以前とは違う内面からの強さが滲んでいた。
そしてシャルナークはしばらく時を経てからAの言葉の意味に気づいた。
泉は枯れた。
きっとこの泉はAの涙だ。
確かに彼女の涙を見たのはこれが最後だ。
なぜだか理由はわからないが、今彼女に触れたら脆いガラスのように壊れてしまいそうだったのでシャルナークは近づくのを一瞬ためらった。
しかし真相を知りたいという気持ちが勝ったためシャルナークは恐る恐る一歩を踏み出した。
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ミカヅチ イヴ(プロフ) - あやはさん» ありがとうございます^^あやはさんも受験勉強頑張ってください!^^ (2019年8月16日 10時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
あやは(プロフ) - すごくいいところに来ててわくわくしてます笑受験勉強の息抜きにすごく助かってます!これからも頑張ってください! (2019年8月15日 22時) (レス) id: df4b2b1b15 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ゆっずーさん» 応援ありがとうございます^^これからも読んでもらえると嬉しいです! (2019年8月7日 19時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっずー(プロフ) - フェイタンもフィンクスも皆面白い笑笑更新お疲れ様でした!また頑張ってくださ〜い! (2019年8月6日 23時) (レス) id: 9ee8873612 (このIDを非表示/違反報告)
ミカヅチ イヴ(プロフ) - ひがんさん» なるべく毎日更新頑張りますね! (2019年8月2日 22時) (レス) id: e1903f9ba5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミカヅチイヴ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月22日 12時