じさつ願望、叶えて差し上げます

第四十七話　羽衣纏う ページ48

「〈テンシの羽衣〉」


すぅ、と息を吸って、戦い過ぎてぼさぼさになってしまった翼をカシスへと被せる。

もう死んで欲しくない。

誰一人欠けないでと。祈りながら。


「リガモさん、トモリさん、ディアさん、ウェイさんに顔向け出来ないじゃないですか…」

「……」

「ねぇ、わたしが貴方に会ったとき、憎くて憎くてたまらなかったんです」


なにせ、実の親を殺したといっても良い、張本人なのですからね。

でもね、とネルは話を進める。


「貴方達にも、ちゃんと理由があるんだなって。
分かったんですよ。だから、今度はそれに寄り添えるようにしたいなって」

「それには本物のじさつ願望者が必要じゃないですか」

「でも、強制しようとすれば。ぼろぼろの心はすぐに壊れて、死んでしまう」

「だから、罪滅ぼしと一緒に、カシスさんにやってもらいたいんです」

「だから、だから」

「死なないで」


一際強くネルの手が輝いた。

その時。

虚ろな目に、又光が宿った。


「そ、んな事言われたら……」

「生きないと、いけないじゃないの…」


にっこり微笑んだ。

ネルの回復なのか、カシスの生命力なのか。

それすらも分からないが、とにかくネルは聞いた。


「なんで、こんな事態になるまで放っておいたんですか？」

「……犠牲は一つや二つですみませんでしたが…」

「終わったから良い物の…これが外にまで広がったらどうするつもりだったんですか？」

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