じさつ願望、叶えて差し上げます (ページ38)

今日:23 hit、昨日:20 hit、合計:2,174 hit

第三十七話　上へページ38

ネルside

「久方振りにこんなに魔法を使ったわ！最近魔力を溜めちゃってたからねぇ、
丁度良い所に貴方達がきてくれて、あっちは嬉しいのよ～！」

「そんな、事ッ！」

そう言ってまた杖が振られる。

今まで通りであれば右から攻撃がくる！

「ざーんねん♥正解は上からでした～！」

ガッシャン、パリン、パリン、そんな音がトモリさんの方から聞こえる。

その次の瞬間、ぐちゃりと嫌な音がして無造作に潰される。

「トモリさんっ！！」

声を掛けてもむなしいまでの静かさがその場を支配するだけ。

また、また、失ってしまった…。

魂は鏡に閉じ込められているのか、リトルホープすら使えない。

あのとき回復をしていれば、まだ生きられていたかもしれないのに…！

そんな事を思いながら、カシスに瞳を向ける。

すると。

「ッ清いその目をあっちに向けないで！！」

「！？」

そう言って今までと違い、思いっきり杖を振り翳してきた。

今までであれば、遊ぶように翻弄されながらずっと戦っていた。

そのせいでわたしの羽も手もぼろぼろだ。

清い目？綺麗な物が嫌いなのか？でもそれであれば彼女の容姿は…？

そんな事を悶々と考える。

すると、絞り出すような声で、彼女は言葉を紡いだ。

「あっちに、あっちに醜さを、教えないで…！」

自分が醜くて、おぞましいのは分かっているから…！

そう言うと、彼女の帽子から鋭い牙の口があらわとなる。

刹那。

「嘘ッ！？」

いつもより速い速度で動かれたと思ったら。

羽の一部が彼女に喰いちぎられて、飲み込まれた。