第二十八話 反対方向 ページ29
気づけばウェイの目は潤んでいた。
あと一回でも瞬きすれば、涙がこぼれ落ちそうな程に。
その鬼気迫る様子と、涙声によって、先ほどまで楽しそうだったエンテェーの雰囲気も一変する。
ただでさえ冷たかった周りの空気は更に冷え、肌をぴりぴりと刺激する言葉の刃が痛い位に突き刺さる。
「なん、で…なんで、」
「じゃあ逆に聞くよ。なんでお前はオレ達をここまで裏切らなかった?情がわいたか?」
そう、自嘲気味に笑うのはディア。
クツクツと笑うあたり、昔の性格すらも曝け出してしまうのか。
それとも、無意識に出ているだけなのか。
「そうだよ、僕は皆に情がわいた。でもそんな事許される訳がない」
「そうだな、許される訳がないよ、お前達のやってる事は」
「でも、さっきの僕の叫びを聞いても分からないの?」
「分かりたいよ。でも、もうお前達は戻るに戻れない所まで来たんだ」
「……あぁ、そっか。」
これ以上情がわく前に。
何度思って、何度実行しようと思ったか。
「……此だから、お人好しは嫌いなんだ」
その、裏切りの劇も、今この瞬間で、終わりだ。
「じゃあね、精々足掻けば?」
「救うって決めたなら、ちゃんと救いなよ」
「おい、どういう事だ?」
「簡単なことだよ。毒を飲んだ」
その場の全員が息を呑む。
まさか、あのときに飲んだ薬が毒だったとは。
ウェイはなにかと薬をつかうことが多かったから気がつかなかった。
ウェイはそう言いながら、ふらふらとこの城とも言える拠点の階段を登っていく。
ぽたぽたとウェイの口から血が垂れ、血の跡が階段のカーペットについていく。
ディア達はもう、追いかける気力すらない。
もう、アイツは死ぬんだ。
そう思うと、涙が止まらない。
止めなければいけないのに、止めてはいけない様な気がした。
……ディアは無理矢理顔を上げて、ずんずんと進んで行く。
「…でぃ、あ、さん?」
「行くよ、早くしないと逃げられる」
「……はい」
大きな心残りを胸に抱えて、三人は階段を降りていった。
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みお - 終了パーティ開催だーー!(今書いている派生作品で後日談を書こうと思います!) (3月27日 21時) (レス) @page50 id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)
悪食 - わぁー!終了した…!お疲れ様でした〜! (3月27日 18時) (レス) @page50 id: 2373853ba8 (このIDを非表示/違反報告)
みお - カシス様ァァァァ( (3月27日 15時) (レス) @page47 id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)
みお - あとはネルお嬢様とカシス姉さまだけ…? (3月27日 15時) (レス) @page46 id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)
みお - 円陣はずれさん» 大泣き(汗) (3月26日 20時) (レス) id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)
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