じさつ願望、叶えて差し上げます (ページ19)

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第十八話　もう戻れない　※ロスト、ぐろ表現注意ページ19

「ぜ、った、いに、しぬんじゃ、ない、わ、よ……」

そう言い残して、リガモは目を閉じる。

息もしていない。

目を開けても、焦点が合うことは二度と無い。

あんなに達者だった口も、あんなに豊かだった表情も。

今では、もう。

なにも動いてくれない。

「わ、たし、がっ…！私の、〈リトルホープ〉、が発動、できたらッ…！」

「死ぬかどうか、定かじゃ無かった。だから、迷ってしまったのは仕方が無い。」

「でもっ…！」

「でもじゃないよ、ネルちゃん！！」

「！！」

「今ここでわたし達が悲しんでも、リガモちゃんは何も嬉しくない！！
今わたし達がやるべき事は、リガモの死を受け入れて、前にすすむこと！！」

リーダーらしく。堂々とそう言ってのける。

しかし、仲間が死んだと言うこともあり、トモリ達の目には涙が浮かんでいる。

ネルは大粒の涙をぼろぼろとこぼしながら、ディアは静かに泣いて。

トモリは涙をぐっとこらえて。ウェイは…、いつも通り静かにそこに立つだけ。

何分、否、何十分泣いただろうか。

雪がしんしんと、リガモの死体に降り注ぐなか、ネルが手を動かした。

「…なに、してるの、かな…？」

「お、はが、を、づぐっでいまず」

手を真っ赤にさせながら、きゅっ、きゅっと雪を固めてお墓を形作っていく。

それを見たトモリも、それを造るのを手伝う。

あんなに一緒に居たのだから。せめて仲間としての敬意を。

そうして完成した雪のお墓は、上出来とは言えなかったけれど、エンテェーの愛がつまっていた。

最後に、ディアが鳩を護衛役としてつけたら。

「……ご冥福を、お祈りしています」

「いつか、またいっぱい話しましょう」

「今まで有り難う。此からも見守っておくれ」

「………」

心なしか、リガモの笑い声が聞こえた気がした。