はちみつ色の君 弐【鬼滅の刃】

24.炎柱 ページ25

上弦の参…！どうして今ここに…

そう思った瞬間、鬼は炭治郎へと拳を向けて飛んだ。
私は咄嗟に炭治郎の上に覆い被さり、それとほぼ同時に煉獄さんの刀が、向かってきた鬼の腕を両断した。



「いい刀だ」



鬼は遠ざかるが、瞬時に腕を再生させる。
再生が速い…！



「なぜ手負いの者から狙うのか理解ができない」

「話の邪魔になるかと思った、俺とお前の」

「君と俺が何の話しをする？
初対面だが俺はすでに君のことが嫌いだ」

「そうか
俺も弱い人間が大嫌いだ
弱者を見ると虫唾が走る」

「俺と君とでは物ごとの価値基準が違うようだ」

「…では、素晴らしい提案をしよう
お前も鬼にならないか？」



鬼のとんでもない提案に、煉獄さんの静かな怒りの音が聞こえる。



「ならない」

「見ればわかる、お前の強さ
柱だな？」

「俺は炎柱
煉獄杏寿郎だ」

「俺は猗窩座
杏寿郎、何故お前が至高の領域に踏み入れないのか教えてやろう
人間だからだ
老いるからだ、死ぬからだ
鬼になろう杏寿郎
そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる、強くなれる」



今まで出会ったどんな鬼よりも禍々しい音と匂い。
加勢しなければ、そう思いながら刀を握るものの、入り込む隙が全く見えない。



「老いることも死ぬことも、人間という儚い生き物の美しさだ
老いるからこそ死ぬからこそ、たまらなく愛おしく尊いのだ
強さというものは肉体に対してのみ使う言葉ではない
この少年は弱くない、侮辱するな」



煉獄さんの言葉に、炭治郎が顔を上げる。
音が揺れる。



「何度でも言おう
君と俺では価値基準が違う
俺は如何なる理由があろうとも
鬼にはならない」

「そうか」



猗窩座は目を少し細め、直ぐに何かの武道のような構えをとった。
地面には雪の結晶のような模様の術式が光る。



「鬼にならないなら殺す」



ドォン、と音を立てて二人の攻撃がぶつかる。
すごい威力、すごい迫力。
その動きは目で追えないほど速い。



「この素晴らしい剣技も失われていくのだ杏寿郎！悲しくはないのか!!」

「誰もがそうだ人間なら!!
当然のことだ！」



目の前で激しい戦いが繰り広げられている中、炭治郎が起き上がろうと身を捻らせる。



「動くな!!
傷か開いたら致命傷になるぞ!!
待機命令!!」



煉獄さんの声に、炭治郎はびくりと体を強ばらせる。



「弱者に構うな杏寿郎!!
全力を出せ！俺に集中しろ！」



二人の激しい戦いに、何も出来ずに時間だけが経過する。

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