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父が狩りを終えて、弟と三人で帰路に着く。



『ねぇ、なんでお父さんは暗闇でも狩りをできるの?』

「それはなA、ずっと息をとめてられる呼吸の仕方があるんだ!」

『呼吸の仕方…?』

「それが出来るようになったから、狩る時もとても早くて強くなれるんだ!」

『暗いのに?』

「暗闇に溶け込んで、一瞬で獲物を狩る!
昔は刀でそれをしてたんだがな、どうも父さんは敵さんが可哀想に思えてなぁ、斬れなかったんだよなぁ」



あの時はなんのことだか分からなくて、ずっと忘れていた。
しまい込んでいたんだ、家族の記憶を。



…あれ、私は今この時を生きているはず。

あの時はだなんて、なぜ思う。



「お姉ちゃん、お家に着いたよ?
ぼーっとしてどうしたの、調子悪い?」



光一が私の顔を心配そうに覗き込んでくる。
その様子が可愛らしくて、頭を撫でた。



「えへへー!」



ぎゅう、と抱きついてくる光一。
こんな顔で笑ってたんだ、私はすっかり忘れてしまっていた。
この笑顔を。

ふと、玄関の横にいつも立てかけてあった刀が目に入る。



『……っ!!』



その瞬間、思い出す。

私はこの刀を使って…鬼になった弟を、斬った。


そうか…夢だ、これは。
私は汽車の中にいた…!!


そう思った瞬間に、私の腰には今まで無かったはずの日輪刀が現れ、体は鬼殺隊の隊服に包まれていた。



「お姉ちゃん、その刀…どうしたの?
お父さんのよりきれいだね」

『うん、そうだね…
私、ずっと忘れていたんだね
いや、忘れようとしてたのかな』

「…?」



夢の中で思い出したのは、家族のことを想えば思い出すようなことばかり。

父が呼吸を使っていたこと。

刀が、日輪刀が家にあったということ。

お父さんはきっと、鬼殺隊だった。
…私と同じく、鬼の悲しみに耐えられず斬れなかったんだ。

言っていたことが、今なら理解できる。



「A、どこかにいくの?」



私の格好を見て、母がそう言う。



『私はずっと…みんなと一緒だよ』



私は、もう忘れない。
大切な人の笑顔を忘れてしまう事はもうない。
辛い記憶も全部、共に。
前に進む為にあるんだ。



『ねぇ光一、お姉ちゃんのこと好き?』

「うん!大好きだよ!」

『うん、そうだったよね…ありがとう』



夢から覚めなければ、どちらにしろ死んでしまう。
それなら一か八か、試すことがある。

首に刀を添える。



『もう私は、過去に囚われない…!』



私は、自分の首を斬った。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 我妻善逸 , 原作寄り   
作品ジャンル:アニメ
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善逸推し - 面白かったです!この後の展開が気になります! (2020年8月16日 10時) (レス) id: 5160686bc8 (このIDを非表示/違反報告)
我妻咲耶 - もうほんっとサイコーです!!!! (2019年8月11日 4時) (レス) id: 3bb721340a (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 月影さん» コメントありがとうございます!本誌でのあの台詞を使うのはちょっと…と思い、あのような台詞になりました!とても嬉しいことばかり言って下さり、すごく嬉しいです!( *´ ∀ `)あまり早い更新ではありませんが、頑張ります! (2019年7月22日 23時) (レス) id: 0fe682c3ee (このIDを非表示/違反報告)
月影(プロフ) - 1番最初のお話から読まさせて頂いてます!今回の話で、夢主ちゃんの前に立つ善逸...イケメンすぎて危うく私倒れるところでした笑話の内容もとっても面白くて、何回も読み返してしまいます!これからの展開がとっても楽しみです!更新大変かもですが、頑張ってください! (2019年7月22日 6時) (レス) id: 140bc76271 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - ひにゃたこさん» コメントありがとうございます!がんばります(*´▽`*) (2019年7月17日 23時) (レス) id: 0fe682c3ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えり | 作成日時:2019年7月16日 23時

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