Take a good look at myself. ページ8
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誰かが、私を呼んでいる。
私の名前を、呼んでいる。
女の人だ。やけにしっかりした声。
私は、ゆっくりと目を開いた。
――こんにちは。――
目の前の彼女は言った。
こんにちは。
私も返した。
あなたは誰。
――誰、だろうね。――
彼女はふわりと笑った。
少し寂しそうに。
何か悲しいことでもあったの。
――ちょっと、ね。――
艶やかなその髪を揺らしながら、彼女は私の隣に座った。
ほのかにエルフの匂いがした、気がした。
妖怪の匂いも、湖畔族の匂いも少し。
彼女は何者なのだろう。
――あててごらん。――
挑戦的な笑みを浮かべ、彼女は私を見た。
いや、やめておく。
――なんで?――
本能的に。
――なるほど。あいつらに似てる。――
彼女は笑った。
今度は楽しそうに。
――じゃあ今度は私の番ね。――
彼女は椅子から降り、私を覗き込んだ。
彼女の瞳に私の姿が映る。
――あなたは、何で泣いてるの?――
え。
何を言っているの。
私は、泣いてなんかいない。
――嘘つき。自分の頬さわってみなよ。――
私の手が自分の頬に触れる。
つるっ、と指が滑った。
え。
――ほらね。――
私の指は、濡れていた。
Take a good look at myself.→←図書委員長、花巻貴大
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