彼さえも彼女の虜【岩泉一】 (ページ4)

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｢あとはこの欄にサインさえ貰えれば｣

彼女にもあとは幹部と同じように署名してもらえばうちの部署に配属できるように準備してある。

岩泉はそう言ってサインを促すように幹部達を見ると同時に、先ほど彼女について好き勝手言っていたことについて口を開いた。

｢それと、先程から何かご不満を仰っているようですが。まだ面接もしていないのに経歴だけで彼女を決めつけるのはおかしいと思います｣

そう言えば、ギロりと幹部たち1人1人を睨みつけ、幹部たちはその視線に思わず冷や汗をかく。

｢分かった、ではこれはまた後日 ...｣

後日という言葉を聞いた岩泉は少し焦りを覚えた。彼女はできるだけ早く部署に配属されて欲しいのだ。

理由は単に岩泉が一緒に働きたいということなので別にたいしたことはないのだが。

岩泉はそんな焦るような素振りを一切見せず、ポケットの中から一枚の写真を取り出した。

どうやらこれが岩泉の最後の切り札らしい。

とどめだと言わんばかりに岩泉はもう一枚写真を手渡した。

｢ちなみに、こちらが彼女の写真になります｣

｢おお！？これは...｣

その写真を見た瞬間、幹部たちはおおっと声をあげて顔を赤くする。

純日本人といった絹のような美しく風になびく長い黒髪に、しっかりと手入れされているのが目に見える柔らかい白さで繊細な肌。

そして長く綺麗なカーブを描くまつ毛とどこまでもまっすぐな黒い黒い瞳。

この警察署は男ばかりで若い女の免疫があるやつなど幹部にはまずいないだろう。

それに控えめがちな日本人には凛々しく大人しい女性が魅力的に見えるらしいので幹部たちにとっては文句無しの美人に決まっている。

予想通り、幹部達は興奮した表情でその写真を眺めていて岩泉の作戦通りだったようだが、岩泉自身は少し不満そうな顔をしていた。

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