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変人と呼ばれるのにはなんだか納得いかないらしい影山くんは、その後も色々バレーの話をしてくれたけど、やっぱり聞けば聞くほど変わってるなあ、と思うことばかりだった。
あと、説明の時の擬音語が多い。ギュンの速攻、とか、ピョピョーン、とか。

こんなに話すの、久しぶりだなあ。

話すうちに、ふと気づいたように影山くんが隣に座る。
おかげで、目はボールを追っているのに、私の全神経は始終隣に集中したままだった。

眼前で白鳥沢の試合が始まった途端、影山くんは持っていたエナメルバッグから何やらノートを取り出した。

「なに書いてるの?」

「今日の反省とか気づいたこととか」

どうやら毎日書いているようだ。

『6/2
 伊達工
 センターせんつかいにくい
 サーブとブロック
 ・・・・・・・・・
 月島 ブロックつよいあいて、ボール半分ネットからはなす→うまくいった
 日向 そっこうの合図 こい と くれ 』

どこにでも売ってるようなそのノートは相当使い込まれていて、ボロボロだ。中身は体調チェックから相手のフォームなど様々。後から追加したような書き込みも満載で、平仮名が多かった。

影山くんはこんな風にバレーに向き合ってるのか、と思った。

「影山くんってなんでバレー始めたの?」

「なんで…ナンデ?」

影山くんはしばらく何も言わなかった。ちらっと横を見ると、何やら難しそうな顔をしてコートを見ている。

「バレーが、あったから?」

「…うん?」

聞き返してみるけれど、返事はそれだけのようだった。

「唐木は」

ぽつん、と呟くような声だった。

「え?」

「もうバレーはできないのか?」

思わず顔を上げると、影山くんもこっちを見ている。
視線が絡んで目を逸らしたくなったけど、彼の目はまっすぐで、逸らしたら負けだと思った。

影山くんが何を考えているのかはいつもわからない。わからないから、逸らしちゃいけない。

「手術をすればできるようになるんだけど、…でも、できるようになっても、やらないかもしれない」

怖くて。
するっと本音が出た。言ってから、私は怖かったのか、と思った。

「影山くんは怖いとかなさそう」

「いや…トスを上げた先に誰もいないのは、怖い」

そう言う影山くんの横顔は微かに悩ましげだ。

そっか、と応えたきり会話は途切れたけれど、不思議と気まずくはない。







ちょっとだけ、影山くんの世界が見えた気がした。



影山side→←・



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作者名:たぬき | 作成日時:2019年8月23日 17時

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