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私は興奮しすぎて声が出なかった。代わりにたくさん拍手をした。
影山くんは、あんなに上手くなるまでにどれほどの努力をしてきたのだろう。

試合後、烏野の選手はみんな、青葉城西の試合を食い入るように眺めていた。私も観ていたけれど、影山くんの言う通り、及川さんの実力も相当だ。

会場の予想通り青城が勝利して、明日の対戦相手が確定する。

厳しい試合になるかもしれないけれど、まだあの速攻を見ていたい。
烏野は面白いチームだと思った。統制の取れた綺麗なチームワークなんて無くて、でも全員が攻撃に貪欲だ。

まだ試合を観ていたい私の気持ちを汲んでか、一緒にいた2人は観客席に座ったまま話しだした。有り難く乗っからせてもらっていると、

「ほーら影山!」

「何すかスガさん」

後ろから声がした。びっくりして振り向くと、何やら先輩に背中を押された影山くんがつんのめった形でそのまま客席に降りてくる。

「影山くん?!」

「応援して貰ったんだから代表でお礼言って来いって、スガさんが」

なんだかよくわからない、って顔だ。

「ええ、わざわざ良かったのに!こちらこそだよ!」

当のスガさんは、はいはい退散ー、と遠巻きに眺める部員の人達を押しやっている。

「A、私たち飲み物買ってくんね〜」

「え?!い、いってらっしゃい…」

「あの!今日はあざっした」

影山くんが2人にも頭を下げる。

あっという間に周囲から人がいなくなって、有難いやら呆れるやら恥ずかしいやら。
でも、そんなことより、

「勝ったね!」

影山くんもニヤッと笑ってこくん、と頷く。不敵な笑み。

「日向くんとの速攻、やばいね!影山くん、サーブもスパイクも上手いしびっくりしちゃった!なんか、本当に、うますぎるよ!!」

思わず前のめりで褒めると、今度はなんだか口をモゴモゴして照れている。可愛い。

だめだなあ。試合中はあんなに真剣で怖く見えたのに、やっぱり影山くんは影山くんだ。

「あの速攻、なんで日向くんは目瞑ってるの?」

「ああ、日向はボール見てるとタイミング掴めないから、俺が合わせてる」

「うわあ…及川さんが変人コンビって呼ぶの、なんかわかったかも」

「? 変人?」

「普通はその状況で全力スイングできないよ」

「そうか?そーいや月島もよく言うな、それ」

「月島くんってどのひと?」

「日向じゃない方のミドルの奴」

「ああ!メガネの!」

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作者名:たぬき | 作成日時:2019年8月23日 17時

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