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早朝、6時。梅雨の時期にしては珍しく、空に雲ひとつない静かで済んだ朝の空気。
こんなに早く学校へ向かうなんてそれこそバレー部だった頃の朝練以来だ。
テンションが上がり、お気に入りの曲を口ずさみながら歩いているところを見られてるなんて思いもよらない私。
「唐木？」
声をかけられて文字通り飛び上がりました。
「かっ、影山くん！？」
よりにもよって影山くんに見られた…！
どうしようもなく恥ずかしいけれど、影山くんはこういうのどーでもいいタイプだ、多分。
大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせる。
「…おはよう。早いね」
「あ、はざっす。朝練あるんで」
唐木こそ早いな。
美術部で作品、仕上げなきゃなの。
大会とかあるのか？
うん、コンクールが。参加は自由なんだけど。
そんな話題が続いて、ちょっと気になっていたことを聞いてみる。
「セイジョー…だっけ、強豪との試合、どうだった？」
「烏野が勝った」
「えっ！すごいね！！」
思わず影山くんの方を見ると、本人はギュッと眉根を寄せている。
「…向こうの正セッターが怪我でほとんどいなかったんだ」
「それでもすごいと思うけどなぁ…。その人、そんなに上手なの？」
「…あの人が3セット目終盤出ただけで、サービスエース連続で取られたんだよ」
「うわ…」
知り合いなのかと聞けば中学の時の先輩と返ってくる。
県内でもベストセッター賞を獲得していたらしい。
「総合力が高くて凄え…ブロックとか色々、俺も真似してた。…ただ」
「？」
「すごく性格が悪い」
そう言った影山くんの表情は心の底から嫌そうだ。
どんな人なのか尋ねられて褒める割には苦々しげな顔だなあって思ってたけど。
「あはは、ムズカシイ顔してると思ったらそういうこと」
「人のこと引っ掻き回すのが好きなんだよな…」
「愛があるからじゃないの」
「あるわけあるか」
「断言(笑)影山くんがそんなに言うならちょっと会ってみたいかも」
「インハイ県予選の時なら見に来ればいるぞ」
そう言われて、私は一瞬、言葉を失くした。
わたし、今、
そんなんじゃない。断じて違うと言い訳をしたい。
誰にだ。…誰かにだ。
「…行ってみようかなぁ。その人、なんていうの？」
「及川さん…及川徹」
「探してみるね」
「おう」
インハイは予選は確か6月頭だ。
ふと、「サワムラ先輩」に憧れていた友達の存在を思い出して、2人も誘おう、と決めた。
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作者名：たぬき | 作成日時：2019年8月23日 17時
