影山くんは、よくわからない。 (ページ2)

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3週間前、始業式の日の朝。

私はまだ入学式の時の緊張を引きずっていた。

だって、学校でろくに人と話せてない。

周りの人達は誰かしらと話していたけれど、越してきたばかりの新参者に話しかける人なんてもちろんいないし。
かと言ってこちらから話しかけるのも躊躇われる。

知らない土地で知り合いがいないというだけで私はこんなにも萎縮するのか。
なんだか自分にもがっかりして、落ち込んだ。

そんな気持ちを抱えたまま
方言についていけないんじゃないか
とか
私にはこのまま友達なんてできないんじゃないか
とか、嫌な想像を頭の中で転がしながら学校へ向かっていたら、

なんと、道に迷ってしまったのだ。

ここどこ？と思った時点ではまだ焦っていなかった。
スマホを出そうと鞄を漁ったところで、

ーーースマホが無い。

どうやら家に忘れたらしいとわかった時点でプチパニック状態だ。

え？どうしよう！？

辺りを見渡しても家、家、家。
地図もなく電柱を見てみたって細かい地名がわからない上に誰もいない。

とりあえず来た道を引き返しながら、人はいないか、地図はないか、あわよくば学校が見えてこないかと目を凝らす。

と、角を曲がったところで前方に人を発見。
こちらに向かって歩いてくる。

男の子だ。学ランを着てる…ってことはたぶんだけど高確率で烏野の生徒！！
よ、よかったぁ…

安心してその場に立ち尽くした私にその男の子が目を向けた。

背の高いシルエットにさらっとした黒髪。切れ長の目。
結構、かなりかっこいい。
目つきがキリッとしてて…ていうかキリッとしすぎてちょっと怖いけど…。

「すみません、あの、烏野高校の生徒さん、ですよね？」

立ち止まった男の子の目つきがふっと柔いでキョトンとした表情に変わった。

あれ？意外と怖くない？

ハイ、と彼が答えてくれる。

「私も烏野なんですけど…その、道に迷っちゃって…案内してもらってもいいですか…」

「いいッスよ」

しどろもどろな私にアッサリと頷いて、彼はそのまま歩き出した。
私もお礼を言いながら慌てて追いかける。