5 0 % の同居 .【黒尾鉄朗】 (ページ2)

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まずは右隣からかな……

そんなことを思いながら買ってきておいた箱菓子を手に取る。

チャイムのためだけに一階まで降りるのはなんだか気が遠く、仕方ない、とドアをノックすることした。

あまり大きな音ではなかったものの、「はーい」と中から明るい女の子の声がして、開かれるドア。

出迎えてくれたのは声からのイメージ通りの小さな女の子で、右隣は家族か……と勝手に思ったりもするわけで。

あとから来たお母さんらしき人に得意のお辞儀を何度もしたあと、箱菓子を渡すと、女の子は喜んでいるように見えた。

笑顔で迎えてくれてよかった。
……まあ、関わりもあまりしないようなお隣さん、程度の認識だろうけれど、引っ越しなんてはじめてで、私の心に確かにあった不安は溶けていった。

ほんの少し移動して、今度は左隣のドアをノックする。いなかったらどうしよう、なんて考えは私の中にはなかったけれど、それは要らないものだった。

ガチャリ、と回るドアノブをじ、っと見ていると続いてドアが開く。「こんにちは」と挨拶をした低い声に、こちらは男の人か……と思い顔をあげた。

その声に、聞き覚えはあったはずだ。

……ぐん、と視界が狭まって、
目の前の、たった一人の男の人を見つめる。

……あれ、もしかして。

「……え、……黒尾」

高校のときの同級生の名前をポツリ、と呟くと「え、知ってンの」なんて返される。よく聞くと確かに黒尾の声で、高校のときと変わらない髪型。

「……あ、えっと」
「隣、引っ越してきました、雛崎……」

そこまで言ったときに、見開かれる瞳。

「……雛崎A、久しぶり、黒尾」

これが、私と「え、マジ？」と溢した黒尾の再会。