検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:3,058 hit

ページ3

.




五分ほど経ったあと、教室の後ろのドアが開く音がした。


いつも2番目に早く教室に着くのは、あまり話したことの無い女の子だった。

どういう距離感で接しようと迷いながら、いつも挨拶だけは交わしているくらいの仲の。


だから今日も、いつも通り声をかけようと思って、目を開けた。

そして、硬直する。


「──え、」


そこに立っていたのは、クラスどころか、学年でも1番背の高い男の子。


──いつもの子だと思ってたのに。


『おはよう』を言うために準備してた喉が、
驚いた拍子に意味の無い音を漏らす。


向こうも私がいることに少しだけ驚いたようで、
レンズ越しの目が、一瞬大きくなるのを見た。


数秒の間、どちらも動けずにいた。
先に動いたのは、私の方。



「…………え、っと……月島くん、おはよう」



目が合ったのに何も言わないのは変に思えて、
私は窓に預けていた背中を起き上がらせながら挨拶をした。



「……おはよ」



少しすると小さく挨拶が返ってきて、それにも私は驚かされる。

月島くんとは一度も話したことはなかったけれど、
彼が無口で人とコミュニケーションを積極的に取らないタイプだと知っていたから。



月島くんは教室に足を踏み入れると一緒に、私から目線を外した。

そうして一直線に私の二つ前の席──月島くん自身の席に向かうと、机に手を突っ込んで教科書を取り出し、そのまま振り返らずに教室を出ていった。


「…な、なんだったんだ…?」


静電気で酷いことになってるであろう後頭部を手ぐしで直しながら、なぜか暴れる心臓をおさめるように、もう一度深呼吸をする。


──このときの私はまだ、心に垂らされた淡い色の名前を知らない。





.

さん→←いち



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.0/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

かかお(プロフ) - ななさん» なな様、あたたかいお言葉ありがとうございます!よろしくお願いいたします。 (2021年2月6日 9時) (レス) id: ee76e1aae3 (このIDを非表示/違反報告)
なな - 更新待ってました!頑張ってください! (2021年2月5日 17時) (レス) id: 4f61ebe657 (このIDを非表示/違反報告)
かかお(プロフ) - りぷさん» りぷ様、お返事遅くなってしまってすみません。あたたかいお言葉ありがとうございます!とっても励みになります。マイペースに更新していくつもりでおりますので、気長に待っていただければと思います。 (2021年2月5日 17時) (レス) id: ee76e1aae3 (このIDを非表示/違反報告)
りぷ - すごく面白くて好きな作品の1つです。更新がんばってください! (2020年8月2日 11時) (レス) id: 587a922c5a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:かかお | 作成日時:2020年5月26日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。