3話 ページ3
治は私の前の席にすとんと座るとこっちの気も知らずに輪飾りを摘まんで振った。シャラシャラと紙の擦れる軽い音が鳴る。
「にしても凄い長さやなあ。これ全部今作ったやつなん？」
「まあね。治も作ったりしてる？」
「気が向けばしとる」
あぁ早くどっか行ってくれ、なんて。
仮にも想い人にこんなことを願う奴は私くらいのものだろう。でも仕方ないのだ。
顔は赤くなってないか。表情はぎこちなくないか。声は震えてないか。高鳴る心音が、彼に聞こえてはいないだろうか。
そんなことばかり気にしてしまう。
想いが挙動に出ないように、絶対に悟られないように。私は笑顔を張り付ける。
「治、こういうの作るの苦手そう」
「何やねん急に。Aはこういうの得意よな」
どうでもいい言葉を紡いでいく。どうでもいい会話を繋いでいく。
「……まあ確かに得意でもない。短冊書ければそれでええかな」
「……願い事あるの？」
「いや、考えとらんけど」
この兄弟はどうにも二人とも適当だ。私はといえば、お願いの内容が気になって一瞬手を止めてしまったというのに。
「Aは？」
「私は特にない。家内安全とか？」
大体願い事というものを特にしたいと思ったこともない。勉強はすれば伸びるし欲しいものがあればバイトして買えばいい。容姿やスタイルなんてものは変えようがないので願っても意味なし。
自分でどうにかできるものは自分でやればいいし、どうしようもないことは願っても仕方ないのだ。
「地味やな」
「うっさい。治だって……」
「あ、の、治くん！！ ちょっといい？」
被された声に自分が何を言おうとしたか忘れた。まあいい。どうせ中身の無い何かだったろう。
「……ええよ」
「ありがとう！ あ、でも文月さん……」
「気にしないで、駄弁ってただけだし」
女の子の顔を見るフリして視線を宙に浮かせながら、私はまた輪飾り作りに戻る。単調な作業をする。余計なことを、考えないように。
ぱたぱたと軽い足音を響かせながら教室を出ていく女の子と、それに付いていく治。なんとなく視線で追っていたら、さっき机につけてしまった糊が腕にくっついた。べたべたする。
ため息をそれの所為に出来ることに安堵しながら、誰にも聞かれないように小さく息をついた。
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えま(プロフ) - ふぐひらめさん» こんな昔の作品ですが読んでいただけてとても嬉しいです！応援ありがとうございます！ (11月27日 1時) (
レス) id: 73c5e48b27 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ(プロフ) - はぁ〜〜〜！！ここ数日作者さんのハイキュー作品を舐めるように見て回っているのいるのですが…正直に言います。供給過多です。宮兄弟大好き。すなりんも好き。作者さん愛してる。そんな全力できゅん殺しにこないで…応援してます！ (11月26日 20時) (レス) @page16 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます。幸せを感じられたなら幸いです！！ (2021年9月11日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 幸せをありがとう (2021年7月11日 7時) (レス) id: e3f2d4851e (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おっふさん» コメントありがとうございます！！ 評価までしてくれて感謝しかありません！！ (2020年1月3日 10時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
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