12話 ページ12
当たり障りのない言葉を返さなきゃ。早くこの話が終わるように。のらりくらりと躱して逃げて、そうすることでしか私は私の心を守れない。
「そう、だね」
「それまでは三人で行ってたんよな」
風が吹いた。昼間の体育館では喧騒に掻き消されていた、笹の葉と飾りの涼しげな音が周囲に満ちる。あれ、ここはこんなに人気が無かっただろうか?
「そうだったね。また三人で行きたいね!」
顔に笑みを張り付ける。ほら、私はあなたのいい幼馴染み。だから、これからも一緒に居させて。分不相応のことを願ったりはしないから。
「………んで…………んなん」
「え?」
どうして。
さっきまで子どもみたいに祭を楽しんでいたのにどうしてそんな顔するの。
試合のときに見せるような真剣な顔。
胸が痛くなる。この人が好きだと、痛んだ胸が鬱陶しいくらいに主張する。
「……“侑と治と三人で、いつまでも仲の良い幼馴染みでいれますように”」
「な、んで」
治の口から紡がれたのは、私の願い事だった。
学校の笹ではなくて、神社へ適当に吊るした短冊に書かれた願い事。
ひらっと治の手の上で何かが……私の書いた短冊が舞う。
「これ、お前のやろ。字がそうやし、侑と治とって書いとるし」
首を一回縦に振った。それを見て眉根を寄せる、彼の気持ちが読み取れない。
また強く風が吹いた。と、私の短冊が吹き飛ばされる。
「あ……」
「ちょうどええわ」
「……どういう意味?」
「願い事、叶わんで欲しいって思ったから取った。飛ばされてよかった。きっと叶わんやろ」
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えま(プロフ) - ふぐひらめさん» こんな昔の作品ですが読んでいただけてとても嬉しいです!応援ありがとうございます! (11月27日 1時) (レス) id: 73c5e48b27 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ(プロフ) - はぁ〜〜〜!!ここ数日作者さんのハイキュー作品を舐めるように見て回っているのいるのですが…正直に言います。供給過多です。宮兄弟大好き。すなりんも好き。作者さん愛してる。そんな全力できゅん殺しにこないで…応援してます! (11月26日 20時) (レス) @page16 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます。幸せを感じられたなら幸いです!! (2021年9月11日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 幸せをありがとう (2021年7月11日 7時) (レス) id: e3f2d4851e (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おっふさん» コメントありがとうございます!! 評価までしてくれて感謝しかありません!! (2020年1月3日 10時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
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