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mission 1 ページ10

影というものは大抵何かに張り付いているものだ。それは地面だったり、壁だったり、場合によっては近くにある物や人だったりに。



それが今、独立して及川の影から生えるようにして立っていた。

平面にしか存在できないはずのものが、立体として存在していた。



「……っ、影山も、」
「?!」




壁よりに立っていた影山の影は、壁に落ちていた。その影から、また何かが生えていた。思わず一歩退いた影山を気にせず、辺りを見渡すような動作をする。ような、としか言えないのは無論それに目らしきものが存在しないからである。



「孤爪も……」
「赤葦くんもだよ……」




気が付けば、四人の影から生まれたそれは廊下に突っ立っていた。それらからは一切の影は伸びていない。そして自分達の影が失われたわけでもなかった。変わらず、足元からは影が伸びている。



異様な光景だった。
突っ立ったまま、誰一人として言葉も発することなく呆然とそれらを見ていた。状況の理解に頭が追いつかないと、却って恐怖心もうまれないんだ。そんなことを孤爪は妙に冷静に考えた。




影の一人がピクリと動く。それに一番近かった及川が思わず身構えた。しかし。





その一人が廊下の奥へと駆け出し始めると同時に、他の影も一斉にどこかへ駆け出した。軽い足音がリノリウムの廊下に響く。





「……は、え?」
「なんなんすか今の……」
『第一ミッション』



あのくぐもった声が、今度は機械を通して聞こえてきた。反射的に音源を探すと廊下の天井付近にはいつの間にかスピーカーのようなものが。



『第一ミッション。あの影を消す。上の階へ行くための条件』





淡々と告げたのち、ブツリと電源の切られたような音と共に放送は途絶える。廊下にはまた沈黙が立ち込めた。




「影を、消せって言った?」
「影ってどうやって消すんすか……?」
「ねぇ。そのためのヒントここにあるかもよ」
「っ、さっきまでここ開いてなかったのに……」



孤爪の指差した先には、誰も手を掛けていないはずなのに開かれたドアが。暗がりの中へ孤爪がさっと手をかざすと、センサーが反応したのだろう。中の電気が付き、部屋を照らす。



「うっわ……」



その部屋には会議か何かで使うような長机が整然と並べられていた。



そしてその上には。
拳銃。
ライフル。
サバイバルナイフ。
他にも名もわからない、でもいわゆる“武器”と呼ばれる物がずらりと並んでいた。


「……これ使えってこと?」

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わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月10日 21時

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