regain ページ8
顔を見合わせてからどれ程経っただろうか。沈黙を破ったのは影山だった。
「……入りますか?」
開け放たれたドアは、まるで早く来いとでも言っているようだった。それと同時に、自分達を拒絶しているようでもあった。
「……入るしかないよね」
及川の言葉に三人が無言で頷く。濃い霧のような何かが立ち込めるなかを、四人は特に言葉も交わさず入り口の前まで歩いていく。
入口から覗いたビルの中は真っ暗だった。恐らく廊下が伸びているのだろう。それくらいはわかったが中に何が待っているかについてはさっぱりだった。
「……ホラゲーとかだと中に入ると扉が閉まるパターンだよね」
「ちょっ、怖いこと言わないでくれる?!」
「でもまあ、ここにずっといるのも落ち着かなくないですか? 何なんですかねこの霧」
建物の中までは霧は浸入していない。見えない何かでもあるように、ビルの内と外とは分断されていた。
「じゃあ俺入りますね」
「飛雄お前怖くないの?」
「怖い、かどうかはわかんないっすけど……」
影山は改めて考えた。自分は怖がってるのだろうか?
確かにここは気味が悪い。未だに現実のことなのかもわかってない。あの男が誰なのかもだ。それでも。
「日向がいない状態でバレーしてるのよりはましです」
「……そうだね、とっとと入っちゃおうか。でもね、」
言いながら及川は一歩前へ足を踏み出した。すなわち、影山の前に立った。
「及川さんが先に入るから。一応この中だと俺が一番歳上だよね?」
努めて軽い口調を及川は心がける。こんなわけのわからない状況で、気持ちまで落ち込んだらやってられない。それにあの男は言ったのだ。
“チャンスはやる、生かすか殺すかは自分達次第だ”、と。
ビルの敷地内、開け放たれたドアの向こうへ足を踏み出した。劇的な何かが起こることもなくそのまま及川はビルの中へ。
「……じゃあ次おれ行くね」
「わかった。次、影山行きなよ」
「赤葦さん次じゃなくていいんですか?」
「まあほら、俺一応先輩だしさ。殿は俺がやるよ」
孤爪、影山と続き、赤葦も難なくビルの敷地内へと入った。そのまま四人で数歩進んだところで聞き覚えのある……むしろさっき聞いたばかりとも言える音が背後で鳴り響く。
最後尾にいた赤葦は、自分の少し前を行く孤爪が振り返った時の表情を見て察した。どうやら予想通りの展開になったらしい。自分達の入ってきたドアは、固く閉ざされていた。
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わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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