epilogue ページ49
影山は目を覚ました。自分の部屋でだ。
そして、目覚まし時計の日付を見て目を剥いた。
一週間前の日付。……日向が最初に学校を休んだ日だった。
朝食を早々に済ませて学校へと走る。テレビの日付も確認した。どうやら自分の時計が壊れていたわけではなく、今日は本当に一週間前らしい。
「？ 何が起きてんだ……？」
「っげ、や、まあああああああ！！！！」
「っ？！ ひな、」
「お先っ！」
今のは。
物凄い速さで自分の横を通り過ぎて行った、あのオレンジ頭は。
「おっせーぞ影山！！」
「……日向」
「？！ や、やんにょか？！」
「トス上げるから打て」
「？ わかった！」
ボールを持つ。指にしっくりくる感じ。
変だ、“全部覚えている”。
寸分の狂いもないトスを日向が打ち抜いた。脚は、動いている。相変わらずのバネとスピードだった。
「……何でだ？」
「何がだ？」
「何でもねえ。それより練習すっぞ」
「おう！！」
その日の夜、及川さんからLINEが来た。やはり岩泉さんも何も覚えていないらしい。
日向から貰った孤爪さんの連絡先を使って向こうの様子も聞いた。黒尾さんや木兎さんが眠り続けていた一週間を、誰も知らないらしい。
全部、返されたのだ。
あの気味の悪い一週間も、日向たちの脚も、俺たちの技術も、全部。引き換えのはずなのにだ。
「それについては向こうのおれが言ってたよ」
“おれらが相棒を連れて帰るには、そもそも相棒の所まで辿り着かせないか……もしくは仲間割れさせるしかなかった”
“だからそれぞれ自分に害のある条件の押し付け合いで仲間割れさせようとしたのに失敗した”
「……“どっちもお互いを庇おうとするとは思わなかった”ってさ」
庇う、という言葉はあまりしっくりこない気がした。相棒なのだ。自分を守るのと変わらない気がした。そういえば日向が何も覚えてなくてよかった。相棒、なんて面と向かって口に出して言ったら絶対からかわれる。というか絶対調子乗る。
でも。
俺は日向が居ない“俺”を知っているから。
“俺”の苦しそうな叫びを覚えているから。
「……おい“相棒”」
「？ 何か言ったか影山？」
「何も言ってねえ。それより練習すっぞ！」
「おう！！」
こいつが俺の相棒だってことを、前より素直に受け入れられる気がした。ほんの少しの感謝と一緒に。
「おっせーぞ影山！！ はやく来いよ！」
「うるせえ日向ボゲェ！！」
―fin―
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わか - 神作品だとおもいます！ (2月6日 20時) (
レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます！！ 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました！やっぱり何度見てもホントに感動します！作ってくださりありがとうございます！！もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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