end ページ48
向こうの俺は勝手だ。及川さんは、向こうの俺は子どもっぽいって言った。その通りだと思う。子どもが手に入らないおもちゃを欲しいと駄々こねているみたいだ。
でも自分と全く違うのかって言われたらそうじゃないし、むしろ本質的には似てるんだろうと思った。似てるし、それに、……いや違う。似てるんじゃない。これは俺だ。俺そのものだ。
あぁわかった。
こいつは確かに“俺”なんだ。
日向と出会う前の“俺”なんだ。
コンクリートの床に叩き付けられる寸前の、向こうの俺の手首を掴む。
「手、痛めるからやめろ」
「……うるせぇよ。今さらどうなったってどうでもいいだろ」
「手と指はセッターの命だろ」
「っ、どうせお前みたいなバレーは俺にはできねぇんだからどうだっていいだろ！！」
振り払われた。でもわかった。あれは俺の指だった。手入れされた、テーピングの一つも巻いてない、トスを上げるための指だった。向こうの俺は、俺と同じくセッターで、セッターでいることに誇りを持ってる。
ただ違うのは、向こうの俺には日向がいないってだけだった。
「……悪かった」
気付いたらそう口走ってた。
「……何がだよ」
「俺は……確かにお前より恵まれてた。でも、日向をお前にやるわけにはいかねえ」
「知るか！！ 返せよ！！」
返せ。返せ。返してくれ。
“俺のものだったかもしれない未来”を。
絞り出すようにそう言葉を吐く“影山”の膝元に雫がぱたぱたと落ちる。
「……やれねえよ。俺の、相棒だ。……でも」
「……何だよ」
「お前は……お前の相棒を探せばいいだろ！！」
「……は？」
影山は喋るのが得意ではない。それでも必死に言葉を探した。向こうの自分のために。
「俺にとっての日向みてえな奴探せばいいだろ！ それに……烏野の先輩はみんなすげえ人ばっかだし……とにかく！！」
両肩をしかと掴み、影山は怒鳴った。
「お前はまだバレー諦めることねえだろ！！！」
数秒、目を見開いて影山を見ていた“影山”はがっくりと項垂れた。
「……諦めた、みたいだね」
「っ、だから諦めるなって……」
「違うよ。……君の相棒を連れてくことを諦めたんだよ」
俯いたままの“影山”を、“及川”が立ち上がらせる。
「これで“終わらせられる”。始めるのも終わるのも、四人の同意が無いと無理だからさ」
「じゃあ……」
「返すよ、“全部”。出口はそっち」
“及川”の指差す先を見た八人の視界は、光に包まれていた。
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わか - 神作品だとおもいます！ (2月6日 20時) (
レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます！！ 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました！やっぱり何度見てもホントに感動します！作ってくださりありがとうございます！！もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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