reason ページ47
「……俺は？ バレーしてるの？」
「してたよ」
恐る恐る尋ねる及川に向こうの世界の“及川”はすんなりと答えた。しかしその引っ掛かる言葉に及川が突っ込む。
「……してた？ 今は？」
「してない。……オーバーワークでね」
練習しなきゃいけない、上手にならなきゃいけない。誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで練習した。見てるのしんどい、なんて言われた。
「……怪我しちゃった。趣味ならともかく、選手としてはもうダメだってさ」
「っ！！」
「俺にも……俺にもオーバーワークだって、頭突きして止めてくれる相棒が居たらって思った。……だからって俺のしたことが許されるわけじゃないけどさ」
“岩泉くん……岩ちゃん、だっけか。……何で俺の世界には居なかったんだろうね”
どこか泣きそうに笑いながら言う“及川”を見ながら及川は歯をくいしばった。
許してやれるわけじゃない。ただ、……向こうの自分がバレーを出来ないという事実に当てられただけだ。
「俺と“影山”は少し面識あるよ。ただ、指導とかする前に俺が怪我しちゃったから……今はそっちの影山と同じく烏野でバレーしてたはず」
ただし、日向は居ない。
当然、入部前のゴタゴタも無ければ3対3もやっていない。変人速攻は生まれようも無いし、青城との練習試合にも負けたらしい。インターハイも青城と当たる前に負けている。
“部の仲も……そっちほど良くはないみたいだね”
「……んで」
「は？」
それまで黙りこくっていた“影山”が口を開いた。
「なんでお前だけ！！ お前だけが！！ 俺だって……お前が俺と違うのは、そいつが居たからだろ！ お前が何かしたわけじゃねぇだろ！！」
膝から崩れ落ちるようにして叫ぶもう一人の自分を見て、影山は言い表せない気分に陥った。
「……ちょっと勝手じゃない？ 飛雄が何もしてこなかったってわけじゃないし」
「きっかけがチビちゃんだったってだけだろ」
冷静に投げられた及川と黒尾の言葉ががらんとした部屋に落ちる。どこまでも無機質な部屋の真ん中で、膝をついて床を殴り付けるもう一人の自分を影山は見ていた。
勝手か。そうだな、勝手だ。いくら羨ましかったからって、こんなことしていいはずない。俺も、及川さんも、弧爪さんも赤葦さんも、一歩間違えたら死んでた。日向たちも一生目を覚まさなかったかもしれない。
それでも俺は、こいつに単純に怒りを向ける気にはなれなかった。
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わか - 神作品だとおもいます！ (2月6日 20時) (
レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます！！ 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました！やっぱり何度見てもホントに感動します！作ってくださりありがとうございます！！もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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