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mastermind ページ45

カコン、と思いの外軽い音を立ててマスクが落ちる。フードの陰が堕ちている男の口元からクソッと悪態が吐き出された。


そして胸ぐらを掴んだままの及川はその顔を覗き込み……その手を離した。ばっと後ろを振り返ったその顔が驚愕していることはその場の全員に伝わる。


「……どうしたんだクソ川」
「こいつ……こいつの顔……」
「……いってぇ」
「「?!」」



すぐに反応したのは日向と影山だった。日向はともすれば口から漏れてしまいそうな声を抑えるために両手で口を塞ぎ、影山は男の方へにじりよった。


男がフードを完全に取る。俯いたままながら、どこか見覚えのあるその頭にピンとこなかった他の者も目を見開いた。男の顔が上がる。顔を歪めながら再度彼は言った。



「返して……たまるかよ!!」
「俺……? の、かお……?」




その男は、影山の顔をしていた。




「……は?」
「俺が見た中学時代の飛雄じゃない……今の飛雄にそっくり……というか一緒……?」
「っ、もしかしたらそれも偽者かも……」
「偽者?! ふざけんな、俺は本物だ!!」


“影山”が牙を剥くように怒鳴るのを影山は呆然と見ていた。自分が目の前に立って、自分を睨んでいる。


「ふざけんな……返さない……返してたまるか!!」
「何子どもっぽいこと……返すって約束でしょうが!!」
『……うん。返さないといけない。影山、おれたちは負けたんだよ』


突如湧いた新しい声にその場の“影山”以外が辺りを見渡した。そして見つけた。目深にフードを被り、ペストマスクを着けた人影……三人分。


「はっ、え? 四人? 誰?」
「……おれ、何となく予想つく」
『たぶん当たってるよ、その予想』


三人が同時にマスクを外す。そして孤爪以外は一様に目を剥くこととなった。


「クソ川……?」
「研磨、か?」
「あ、赤葦が二人??」


「言っとくけど、偽者じゃないから。おれらにはおれらの人格があって、おれらの世界もある。性格は似てるらしいけど……ほんと? 何で“そっち”のおれ髪染めてるの?」


そう問う“孤爪”の髪は黒のままだった。


「髪は……じゃない。“そっち”って何? それから……これは結局あんたらが仕組んだ事なの?」
「……おれら負けたんだし、説明するくらいはいいか。いい?」


無言で“及川”と“赤葦”が頷く。“影山”は黙ったままだった。



「えっとさ。……“パラレルワールド”って聞いたことある?」



“孤爪”は静かに語り始めた。

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わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年6月10日 21時

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