lie ページ44
練習するのだ。
どれくらいやれば技術を取り戻せるのか、そんなことを考えている時間なんてない。
今までやってきたように、これからも練習すればいい。
どのくらいの時間そうしていただろう。急に視界が白んだかと思うと、影山たちは元の部屋に……日向たちのいる部屋に帰って来ていた。
「うおっ?! ドア消えたと思ったら今度は影山が急に現れた?!」
「何でもありだよな、ここ。何してたんだクソ川」
「バレーの練習、してたよ」
「っ、」
影山は改めて手元を見た。持っていたはずのボールは無い。8年間培ってきた技術も。それでも。
「おい日向」
「……なんだよ」
「帰ったら練習付き合えよ。春高まで時間ねぇんだから」
「〜〜っ、だから……!!」
「決定権は俺にある。だから諦めろ。俺は……俺たちは、お前を取り戻しに来たんだ」
置いていくなんて選択肢はない。
それが例え一部でも……“脚の感覚”だとしても、向こうにくれてやるつもりはない。
「帰るんだ。皆待ってる」
「そうだよ、帰ろうチビちゃん。岩ちゃんも、嫌って言っても引きずって帰るから」
「おれはクロ引きずれないから……ちゃんと自分で歩いてね」
「帰りましょう木兎さん。……ほら、きっとあれが出口です」
遥か先、妙に眩しい一点があった。そこから自分達のところまで光の道のような一筋が続いている。
「あそこを出れば俺たちは帰れ……」
『行かせない』
くぐもった声だった。
ただしその声は、天上から降ってくるのではなく自分達の真後ろから聞こえた。
『行かせない。行かせて……たまるか』
「……相棒の所まで辿り着いたぞ。返して、くれるんだろ。俺の技術と引き換えに」
訝しげに問う影山に、その男は笑いながら言った。マスクにこもった声なのに嫌に耳に届く声だった。
『そんな約束、どうして俺が守らなきゃならない』
「っ?!」
「影山、そいつから離れて。危ない」
やけに不安定な男だ、と孤爪は分析した。
赤葦の問いを突っぱねたかと思うと、クロスワードの質問には丁寧に答える。返してやると言ったのに、約束は守る気は無いと言う。
愉快犯のような物だと思っていた。
おれたちが必死な様を、安全な所から見て笑っているのではないかと。
でもそれにしては……本気で四人を留めて置きたいように見えるのだ。
『四人は返さない。お前らは帰れ』
「っふざけんな!!」
「及川!!」
及川が男の胸ぐらを掴んで揺さぶる。
その衝撃で、マスクが落ちた。
90人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ