mission 3 ページ31
及川は確かに自分が落ちていく感覚を覚えていた。
だから次に目を覚ましたとき、一瞬“……ここ天国?”なんてことを考えてしまったのは仕方ない事だと思った。
そこは体育館だった。少なくとも及川にはそう見えた。静まりかえった体育館、人気はない。
そう、人気が無いのだ。
及川しか、居なかった。
「……飛雄? 孤爪くん? 赤葦くん?」
さっきまで一緒に居たはずの三人の名前を呼ぶも返事は返ってこない。姿が見えないのだから当然とも言えるが。
「ミッション……失敗したってこと? いや、それならどうして俺はここに……」
わからないことだらけだった。自分がどこに居てどんな状況なのかも、他の三人の居場所も安否も。
だから、
「及川さん!!」
「!! 飛雄?!」
聞こえてきた声の違和感に気付くのが遅れたのも仕方なかったのだ。
「及川さん!! “サーブ教えてください!!”」
――――――――――――
ここ、どこ。
孤爪が起きてすぐに思ったのはそれだった。その言葉の意味はまんま“ここはどこなのか”という疑問の意だけではなかった。
(……何ここ、すっごくヤな感じ)
孤爪の居る所は、有り体に言えば迷路のような場所だった。少し進んでみてそれに気付いた孤爪は、今は闇雲に動かずに居る。そしてその迷路は鏡張りだった。
それだけなら孤爪も変な場所だと思うだけで、何も嫌な場所とは思わなかった。嫌なのは、その迷路のいたる所に見知らぬ人が立っていることだった。人なのか、人らしきナニかなのかはわからないが。
孤爪は他人の視線が苦手だ。
ただでさえ苦手なそれが、鏡の所為で何十にも増えて自分に刺さってくるような気がした。
「何なのここ……」
――――――――――
「落ちたと思ったんですけど……ここどこですか……?」
思わずそう声に出した赤葦に、言葉を返す者は居ない。
確かに落ちたはずなのに、身体はどこも痛くないし頭がクラクラすることも無かった。眠りから覚めた、そんな感じにいつの間にかこの部屋に居た。ただし、自分以外の三人は居なくなっていたけれど。
「結局ドアは当たってたのか間違ってたのか……まあ生きてるならいいか」
死んでいないなら、まだ取り返すチャンスはあるのだから。
ただし、今回は自分一人しか居ない。自分一人で乗りきらなければいけないのだ。
そんな事を考えていた赤葦の足元に、mission 3と書かれた紙がひらりと落ちた。
mission 3【side Oikawa】→←mission 2
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わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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