mission 2 ページ28
問いはあと一つ。
これを当てれば残り二つのドアのうち、どれが正解なのかを当てることができるかもしれない。
それにも関わらず及川の表情は固く、ひたすら問いの書かれた紙を睨み付けていた。
「……及川さん？ どうかしましたか？」
沈黙に堪えかねて赤葦が声を掛けると及川はため息をひとつ落として言った。
「……無理だ」
「え？」
「俺の問い……答えられないよ」
「それってどういう……」
「孤爪くんの高校ってさ！」
話し途中の孤爪を遮って、及川は笑みを浮かべながら、でもどこか苦々しげに言った。
「“ネコマ”高校、だっけ。ちなみに猫って動物の猫？」
「違うけど……音に駒で音駒だよ」
「そっか。それじゃあさ、猫は英語で？」
「はあ？」
「猫は英語で。何？」
今の状況と何が関係あるのか、それはわからないけれど及川の様子にただならぬ物を感じた孤爪は素直に答えた。
「cat。キャット、でしょ」
「そうだね。飛雄！ 烏は英語で？？」
「え、カラス？ カラス……」
眉間に皺を寄せて考え込む影山の横で赤葦がぽつりと答える。
「crow……ですね。もしかして、各校のシンボルを聞かれたんですか？ なら俺の所はowlですね。答えられないことはないんじゃないですか？」
「俺も最初はそう思ったけどね……でもよく考えてみて。残ったマスの数は9だよ。合わない」
残ったマスは9文字分。梟谷のカラーで、不自然に折れ曲がった床だ。
「一番文字数の必要なマス、ですね。及川さん、一体何を聞かれ……そうでした、言えないんでしたね」
孤爪はふと首を絞められる感覚を思い出した。命に関わることはない、牽制だけと言われても二度と味わいたくない感覚だ。
「直接的じゃなきゃ良いんでしょ？ なら大丈夫。孤爪くんさ、さっき猫の英訳答えてくれたよね」
どこか疲れたような、諦めたような顔で及川は言った。
「じゃあさ、……猫の学名も知ってたりしない？」
「！！」
「学名……ってなんすか？」
学名とは。
学術上、動植物につける世界共通の名称。ラテン語による。つまりは普段自分達が使っている和名とも、英訳とも異なる名前だ。
「俺の高校ってことは、梟谷……梟の学名、ですか」
「……俺はわからなかった。この場に偶然そういうことに詳しいって人が居ない限りはそうそう当てられないよね」
「え、じゃあ……最後の問いは答えられないってことですか？」
影山の言葉が、静まり返った部屋に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 90人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わか - 神作品だとおもいます！ (2月6日 20時) (
レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます！！ 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました！やっぱり何度見てもホントに感動します！作ってくださりありがとうございます！！もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
