【ハイキュー!!】触れなば落ちん【北信介】

5 ページ5

「やばくない？ 髪色。転校初日からだよ？」

「てか何でこの時期に転校してきたんやろ」

「俺聞いたことあるんやけど、なんでも子ども堕ろしたとか……」

「うっわマジか」

「繁華街彷徨いてんの見たって人も居るって」

「何かヤバめの人と付き合いあるとか」

「もうこの学校でも何人かとやったとか」







今日も根も葉もない噂話ご苦労さまですって感じだ。何だかヒートアップしてる気がする。堕胎？ してないわふざけんな。まずもって私は未経験だし、更に言うなら彼氏が出来たこともない。中学から高二までの五年間、私はある一つの事に打ち込んできたのだから。




そのある一つのこと、すなわち水泳。



自慢になるけれど、高校には水泳の推薦で進んだのだ。全国大会で五本の指に入るくらいの実力ではあった。

そう、だったのだ。



オーバーワークによる肩の故障で続けることは断念。退部し、推薦は取り消され。通っていたのは私立校で学費もキツいし、なにより周りから可哀想な物を見るような目で見られるのが嫌だったので両親に頼んで転校を依頼。了承のち母方の祖母の家に引き取られる、ここまで二ヶ月間の出来事だ。



まさか転校先でこんなことになるとは思ってもみなかった。
弁明はしようと思えばできる。さっき取り沙汰されていた色々は、私の転校の経緯を言えば説明できる。




「……でもなんで私が弁明しなきゃいけないのさ」
「？ なんて言ったん？」
「うわ？！ 北くんかびっくりした」
「プリント届けようと思っただけやったんやけどな」



ごめん、と律儀に謝られた。別に怒ってるわけではないんだけど、これは彼の性格的なものなのだろうか。それにしても、彼とはやたら縁がある。




「いつも色々ありがとう。頼まれちゃって大変でしょ？」
「いや、自分でやってることやし」
「……自分で？」
「自分で」
「自主的に？」
「自主的に」




やっぱり北くんは変わってる。
きっと私の噂を聞いたことがないんだろう。聞いてたら誰だって避ける。……いやいた、噂聞いた上で関わってくる変わり者、若干二名。

6→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す