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始業ギリギリに教室に入った。昼なんて食べる暇がない。誰とも目が合わないように、努めて視線は自分の席だけを向くようにした。
いつも以上に皆の視線がうるさい。この中にいるのだろうか。あの報告をした誰かが。私を陥れるためのような、あの報告を。窓側の席に腰を掛けるまでの間、周りの視線を私は無視した。
なんで、とか。どんなつもりで、とか。
そんなこと考えても仕方ないってわかってただろ自分。今さら何言われようと気にしない、気にしないでいるしかない。
ひそひそと。こそこそと。そんな声は、耳にいれない方が私のためなのだ。聞くな。聞いていいことあった試しがないんだから。
囁き声は先生が教室に入ってきたことでピタリと止んだ。前にやった古典文学の続きが始まり、だれたような空気が流れる。だれた空気のまま時間だけが淡々と過ぎていく。
それでいい。これが終われば今日は帰れる。さっさと帰りたい。はやく帰りたい。……どうして帰りたいんだろう。私は平気なはずなのに。
気にしてない、はずなのに。
手に変に力が入って、シャーペンの芯がポキリと折れた。そんなときだったと思う。
「そうやな、この“触れなば落ちん”風情の女って言葉の意味なんやけど」
先生の声が急に耳に届いたような感じがした。さっきまでちゃんと聞いてなかったんだな自分。聞かなきゃ。
「助動詞の意味の確認は皆やったやろ？ 直訳すると“触ったら落ちそうだ”になるんやけど……」
教室の空気はぬるい。皆いつものように適当に、ぼんやりと、先生の話を聞いている。ぼんやりと、聞いていた。
「そのまんまの意味では使わんくてな、“誘ったらすぐに応じそうな女”、現代風に言うなら“軽い女”って意味になるからな〜」
“視線が刺さる”、と。
比喩でなく思った。
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えま(プロフ) - Roaさん» コメントありがとうございます！！ 北さんの魅力を表現出来ていたなら何よりです！！ 宮兄弟も書いていて楽しかったので、そう言って頂けるとありがたい限りです！！ (2020年6月19日 8時) (
レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
Roa(プロフ) - 読んでる途中心臓が痛かった…っ、でも北さんの真っ直ぐなところがもう心にぐっときていつも間にか目の前歪んで（；＿；）宮兄弟の「やぁぁっとくっついたん！？！？」が個人的にめちゃくちゃ好きでした笑北さんの勘違いしていた触れなば落ちんの意味も素敵で感動 (2020年6月19日 5時) (レス) id: edef434db0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - 宙さん» こちらこそ読んでいただきありがとうございます！！ 切なさ甘酸っぱさを味わって頂けたなら嬉しいです！！ (2020年5月31日 16時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - 胸がギュッてなった！なんて素敵な終わり方！！！こんな作品を作っくれてありがとうございます！ (2020年5月31日 14時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
菜乃花 - いやいや！！お気になさらず(^^)中学のときは皆まだ幼いので仕方ないと思ってます笑その分も今全力で楽しめてます！これからも頑張ってください！一緒にハイキュー！！も応援し続けましょう〜！ (2018年12月1日 10時) (レス) id: 77a025593a (このIDを非表示/違反報告)
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