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「……内緒?」
「うん。宮くんって目立つでしょ? でも私地味だから……」
その日から着々と私は布石を打っていった。
そのうちの一つがこれだ。
「だから、付き合ってるってこと周りに内緒にしておきたいなって」
どうせ近いうちに別れるのだから、私と彼とが付き合っていたという事実は隠しておいた方がいい。それに、そうしないと彼に嘘告白をさせた人達が不審に思うことになる。“どうしてまだ振ってないんだ”、と。
そうなるとまずい。それを言及されたのなら、これ幸いと彼は私に真実を告げるだろう。そして、嘘告白をさせた連中もおざなりの謝罪を口にするのだろう。そうされてしまったら私は許すしかなくなる。
形だけの謝罪に、形だけの赦し。
そうしないと私は、謝罪を頑固に受け入れない冷たい人間のレッテルを貼られる。それは御免だ。
「ええよ、坂城さんがそうしたいんなら」
「ありがとう!」
彼としてもこんな付き合いは隠しておきたいだろう。だからこの返事は予想済みだった。
「そんなん気にせんでもええと思うんやけどなあ」
「私目立つの苦手だから……」
しれっと本心を隠しつつ言う彼に、私は本心を交えて返事をした。
私は嘘が得意じゃない。だから、決めたのだ。嘘のなかには積極的に事実を交えていこうと。全部が嘘よりは破綻しないで済むはずだ。
「もちろん、宮くんと付き合えるのは嬉しいんだけどね!」
(あなたが私のこと本当に好きだったなら、これは嘘の欠片も無い事実だったよ)
慎重に、真実を少しだけ歪めた物たちで、どうしても隠しておきたい本音を覆っていく。
「……そか。俺の方こそ嬉しい」
そして私は彼の吐く嘘をその陰で眺めていくのだ。
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えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です!! ありがとうございます!! (2020年10月3日 15時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません!めっちゃ好きです!! (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか?さん» ありがとうございます!! 作品を楽しんで頂けたようで幸いです!! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです!最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて!! 身に余る言葉です、ありがとうございます!! (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
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