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今度は私の声が詰まる方だった。
「さあ……というかもう名前で呼ぶのはやめて」
「誤魔化さないでや。告白した時に好きって気持ちが無かったのは分かった。なら、今は」
「……知らない」
「今のAちゃんはどうなん？」
「だから名前で呼ばないで！！」
嘘は終わらせたんだから。嘘の片鱗の残る呼び方をしないで。うんざりだ、嘘をつかれるのも、それから嘘をつくのも。
今の自分がどうかなんて、そんなの私が一番知りたいのに。分からないのに。振り子の針は振れたまま。酷い人だとあの時は思った。けれど罰ゲームに付き合わされた側の彼にそう長く恨みを抱いてはいられなかった。だからきっと嫌いじゃない。恨んでられない。
けれど好きかと聞かれたら？ 嫌いじゃないのは確かだ。お昼休みは普通に会話が弾んだしデートは楽しかった。浮かれる度にこれが嘘だということに傷付けられた。でもそれが全部本当だと言える？
彼と偽物のお付き合いをする中で、私はきっと彼のいい所を無意識に探しただろう。好きになろうとしただろう。全部が全部嘘だと、嘘が苦手な私はきっと上手くいかない。そう考えたから。だから、この好意が、見つけた彼の美点が、“本当か嘘か”分からない。
恋だったかもしれない。恋になっていたかもしれない。もはや私にもこれが何だか分からない。誰の所為で？ 彼の所為で？
この恋を――今や恋と呼ぶにも曖昧になってしまったこの感情を――曖昧にぐちゃぐちゃに、よくわからないものしたのは誰だ。
そう、私だ。私だった。彼じゃない。
「……分からない。嘘と本当が混ざった所為で、宮くんをどう思ってるのか分からない。それに……」
「それに？」
「宮くんが何を考えてるのかも分からない。“付き合ってる”って、何？」
冷静に考え直してもやっぱり訳が分からない。何なのそれ、何それ、ってなってしまう。あの時私ははっきり“付き合ってない”と言うつもりだったのに。
「……別れた覚えはない」
「そういうことを言いたいんじゃないんだけど……なら、別れようか」
「っ、無理やしそんなん」
「なんで？ ……仕返しがしたいなら止めないけど」
「違うわ！！ 何でそうなるん……」
何が違うの。どうなるのが正解なの。自分を騙して仕返しを果たした女に対して、どういう感情を抱くのが正解だって宮くんは言うの？
私には到底分からなかった。
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えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です！！ ありがとうございます！！ (2020年10月3日 15時) (
レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません！めっちゃ好きです！！ (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか？さん» ありがとうございます！！ 作品を楽しんで頂けたようで幸いです！！ (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか？ - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです！最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて！！ 身に余る言葉です、ありがとうございます！！ (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
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