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顔色が悪いよ、と友達に言われた。そうかもしれない。あまり眠れなかった。頭はぼんやりしていて……そのくせある一点にのみ冴えていた。


そろそろ、いや、今日辺り。
幕引きにしよう。全部終わらせよう。


今までの間、私は宮くんに優しい彼女だったろう。軽口の有無だとか、控えめだとか、そういうことを言ってるんじゃない。

広めたくないであろう交際の事実を自ら内緒にしてくれと頼んだり、一緒の時間を取ってくれとかいう彼女にしか許されないわがままを言わなかったり。昨日だってそう。



「……何で私に告白してくれたの、って聞く流れだったけどね」



聞かなかった。答えられないのは知っているから。いや、宮くんは嘘が上手だしなんとか理由を捻り出せるかもしれない。けれど、私は宮くんに嘘をつかせなかった。嘘を重ねたら、きっと後悔も深くなっただろうけれど。


でも、宮くんは私に優しくしてくれたからおあいこだ。ほんの少しの優しさくらい、返してあげないとバチが当たりそうだ。



昼休みには決着をつけるつもりだった。放課後の方が気まずくなくて良いだろうかとも考えたけれど、どうせ同じクラスだ。いつにしたってあまり意味は無いだろう。



「ね、早く行こ。着替えなきゃいけないんだし」
「そうだね〜、ちょっと待って」



2限目は体育。いつも女子の方が早めに終わるから、あの空き教室で先に待つことになるのは私の方だろう。心の準備が出来て丁度いい。



「ほらA早く!! いつまでも教室に残ってちゃ男子たち着替え始められないよ」
「うん、ちょっと待ってね」



女子更衣室はあるのに男子更衣室の無い稲荷崎では、男子達は教室で着替えて体育へ行く。その邪魔にならないように着替えと弁当を引っ掴んで足早に教室から出た。宮くんが目だけこちらに向けて口の端をにっと持ち上げて見せた。



私は果たして上手く笑えただろうか? きっと心配の必要は無いだろうけれど。どっち付かずの私の心は、ゆらゆらとその時心地好い方へ振れた。恋人気分に浸ってさぞかし自然に笑っていたに違いない。



でもそれも、今日で終わり。全部終わり。
 
 
 
 
 

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えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です!! ありがとうございます!! (2020年10月3日 15時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません!めっちゃ好きです!! (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか?さん» ありがとうございます!! 作品を楽しんで頂けたようで幸いです!! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです!最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて!! 身に余る言葉です、ありがとうございます!! (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年4月24日 17時

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