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4限目終了のチャイムが鳴ると同時に、俺は弁当をひっ掴み階段へと向かう。それがこの頃の俺の日課となりつつある。
足は急く。別に急ぐ必要は無いのはわかっとる、早く着いても昼休みの時間は大して変わらんし、あの人と居れる時間も大して変わらん。それでも勝手に早くなるのは何でやろ。俺の足も、心臓も。期待値と比例するように早くなる。
「……早いね」
「何かはよ着いてしまったんで」
結果追い越す形になってしまって、俺がAちゃんを音楽室で迎えた。静かに扉を閉めると、いつもの通りその人はピアノに一番近い席に腰を下ろす。その隣に俺も腰を下ろす。
「いただきます」
凜とした声がそう告げて、白い手が弁当の包みを開いていく。その様子を俺はかなり長い間眺めとったらしい。首も動かさないままに視線だけこちらに一瞬寄越したその人は、怪訝そうに尋ねてきた。
「何で見てるの？」
「や、何か歌上手くなるもんでも入っとるんかなって」
「そんなのあったら毎日食べるけどね。何もないよ」
確かにその弁当は俺のより幾分小さい、それからカラフルな、でも普通の弁当やった。今さらに俺も弁当を開く。
綺麗な箸使いで黙々と飯を食べるその人は、最初俺に何も話し掛けてこんかった。一緒に弁当を食べた初日、全く会話なし。邪魔なんかなとも思ったけど最近わかったことがある。
「宮くんの弁当にはバレーが上手くなるものでも入ってるの？」
「入っとるわけないです、そんなんあったら毎日食べ……あ」
「でしょ？ 歌も同じだよ」
声は立てずに口の端を少し上げるようにしてその人はひそやかに笑った。
最近わかったことがある。
この人はあんま喋らんだけで、俺を邪魔にはしとらんらしい。
他にも知れた。クラスの、この人と同じ音楽部の、そん中でも話しても面倒にならん奴にさりげなく聞いたこと。篠岡Aセンパイは、どんな人なんやってこと。
一言でまとめれば“高嶺の花”。
『篠岡先輩な！ めっちゃ上手い。たぶん部で一番上手いんちゃうかな〜』
その上教え方も上手い、才能に胡座をかくことなくストイックに練習し、上手いことを鼻に掛けない。
『その上美人やし。雰囲気あるって言うんかな、そんな感じ。やからうちらはあんま話し掛けれんなぁ、緊張するから』
高嶺の花。
いつの間にかピアノの傍に移動して、背筋を伸ばして立っとるその人は確かにそんな感じやった。
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えま(プロフ) - 春塩さん» コメントありがとうございます！！ 尊敬するだなんて嬉しいです照れます……ひたすら楽しく執筆したものですが、春塩さんにも楽しんで頂けたのなら幸いです(*´∇｀*) (2018年11月13日 21時) (
レス) id: 8f82649d25 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - 杏采さん» コメントありがとうございます！！ 一気読みなんて大変でしたよね……！！ 嬉しいです(*´ω｀*) これからも頑張ろうと思います！！ (2018年11月13日 21時) (レス) id: 8f82649d25 (このIDを非表示/違反報告)
春塩(プロフ) - 完結おめでとうございます。尊敬するお二方の合作、本当に素敵でした。侑くんと夢主のやりとりがとても可愛くて切なくて、最後までずっと引き込まれていました。素敵な作品ありがとうござました。執筆活動応援しております！ (2018年11月13日 17時) (レス) id: 7ae3000a58 (このIDを非表示/違反報告)
杏采(プロフ) - 完結おめでとうございます。憧れのお二方の合作と聞いて即座に反応して一気読みしてしまいました。ありふりた言葉しか出てこないのですが、本当に素敵な小説をありがとうございます。これからも頑張ってください！ (2018年11月13日 17時) (レス) id: d19c07683e (このIDを非表示/違反報告)
ウ タ(プロフ) - kyo10aaa1877hanさん» 更新遅くなってしまって申し訳ないです、お待たせしました！(*¨*) (2018年9月12日 11時) (レス) id: 12a750fc54 (このIDを非表示/違反報告)
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