【ハイキュー!!】君だけに伝えたいこと。【短編集】

【西谷　夕】ＯＲＡＮＧＥ外伝 ページ26

〔あなたside〕




・


「ほしい？」
「ほしいです!!」

田中の潔い返事が面白くて、私はもう一度「ほしい？」と弄ぶ。
単純馬鹿すぎて、笑えるを通り越しある意味尊敬。

「はい。腹壊しても責任は取らないから」
「何入れたんだ望月！」
「睡眠薬」
「嘘だと言ってくれェ!!!」
「嘘」

嘘かよォ!!といつも通り声のデカい田中。
毎回思うんだけど、喉が枯れそうだ。

バレンタインデーである本日２月１４日は「バレンなんとか」さんが死んだ日。
そんな日にチョコ作ってわいわいやるのは変な話だ、と前々から思っていたけど、この坊主頭みたいにこっちが恥ずかしいほど喜ばれるのなら、年に１回ぐらいこういう日があってもいいのかもしれないと思える。

我ながら単純な話だ。

「ノヤっさんにも渡すんだろ？」
「くれって言われてるし」
「言われなかったら渡さない気だったのか！？」
「みんなと同じヤツでいいかな、って思ってた。」
「……、」

田中は早速私が渡したチョコを開けた。そして、唖然。

「別に義理って書かなくても良くね？」

チョコペンで〔GIRI〕って書かれたチョコを手で掴み、何故か抗議された。
だって書くこと無かったし。

「ノヤっさんのには書いてないだろうな」
「ソレ書いたの田中だけ。特別だよ、喜べー」
「わーい！……なんかおかしくね？」




◇



いつも通り。昼休み。中庭。
２月なので少し寒いかと思ったが、今日はそうでもない。
春にはもちろん劣るがそれなりに暖かい。

「はい。」
「おぉ！サンキュー！」

夕はその場でチョコを開け、一粒口に運び「うお、上手い！」と目を輝かせる。
市販のヤツを使ったんだから何か混ぜない限りマズくはならないだろうし。
というか満面の笑みの夕にそんなに喜ぶこと？って思うけど、多分それは私なりの照れ隠しなんだと思う。

夕が喜んでくれるって言うのは渡す前からうすうす勘付いてたし、というか分かってたし。
だからこそ私は夕を選んでいるのだし。

「来年も渡せると良いな、って思ってます。」

私がそう言うと、「来年も待ってるぞ」と夕が笑う。
彼の笑顔を見るたび、やっぱり好きだ、と何度も思う。


「あ、腹壊しても責任取らないから。」
「何入れたんだよ!!」
「睡眠薬」
「嘘だろ!?」
「嘘だよ。」

入ってるのは１年間分の惚れ薬。
効力は来年の２月１４日まで。

でもまぁ、そんなもん必要ないって信じてる。



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以前書いていたＯＲＡＮＧＥの外伝でした。

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