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36.小さな女の子。 ページ36

――――なんでも。




なんでもわかっていると、思っていた。



だけどそんなのは、ただの俺の勘違いだった。




俺の知らない、Aがいたんだ。






女の子の顔をする、Aが。





「…………前、徹に『私は徹に嘘つける』って、言ったことあったよね」



「…………うん」



「私、徹に一つだけ、ずっとついてる嘘あるの」





なに?とAを見返す。



Aは一度俺を見てから、赤くなった顔ではにかむように笑って。








「――中学生の頃から、私ずっと徹のことが好きなの」






ドクン、と胸が脈打ったのがわかる。




照れくさそうに、だけど少し申し訳なさそうに笑うAは、驚くほどに綺麗だった。




こんな動悸、経験したことない。



すごいうるさくて。




だけどどこか、心地いい。






「気づかなかったでしょ?」



「……えっと……うん、気づかなかった」




「だよね。そのために私必死に隠してたもん」





なんだか、Aの雰囲気がいつもと違う。



いつもよりも穏やかで、ふんわりとした雰囲気が漂っていた。






もしかしたら、これが本当のAなのかもしれない。





それから、これが、岩ちゃんだけが知っていたこと。






「ずっと黙っててごめんね。徹のこと困らせたくなかったんだ」



「…………」




「これからも、前と変わらずに接してよ。私も気持ち忘れられるようにするし」




「だから、安心して」と笑ったA。






その顔には、清々しさまで感じられて。





消えてしまいそうな錯覚。






俺はAへと手を伸ばして、俺よりも一回り小さな体を抱き寄せた。







「…………徹……?どうしたの……?」



「……っ……」




――――小さい。






こんなにも、この子は小さい。






勝手に、Aはお母さんのような強さがあると思っていた。




俺と岩ちゃんをいつも支えてくれて。




俺たちは、Aがいないとダメで。






だけどAは、俺が思っているよりもずっと、弱くて儚いものだった。





俺へ気持ちを伝えて、そして関係が変わることを恐れていた。





俺への気持ちを隠しながら、ずっと俺のそばで、俺を包んでくれていたんだ。







だからね、A。






「…………A」






「何……?」









「――――好き」

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あお - この作品ほんと大好きです! (2022年9月22日 22時) (レス) @page41 id: 452b671271 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 泣きましたありがとうございます好きです() (2021年5月4日 16時) (レス) id: e7d206068b (このIDを非表示/違反報告)
イエーーーイ - めちゃ好きぃぃぃぃい大好きぃぃぃぃいあ゛あ゛っっっ (2021年3月31日 11時) (レス) id: 8c04e9d971 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はああぁぁぁぁぁぁぁぁ尊い尊い尊い尊い死ぬ (2020年10月25日 18時) (レス) id: 200e605a50 (このIDを非表示/違反報告)
はー - 心臓爆発するぐらいキュンキュンした! (2019年9月20日 19時) (レス) id: 413b05e864 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼空 | 作成日時:2014年9月27日 12時

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