35．それって。 ページ35
向かったのは、屋上だった。
Aは何かとここがお気に入りだったし、それに、何故かAは屋上の鍵を持っていた。
手を伸ばすと、予想通り回るドアノブ。
「やっぱり…………」
キィ……ッと錆びついた音を立てて開くドア。
彼女は、すぐ見つけられた。
ゆっくりと歩み寄って、Aと少し離れた位置に立った。
「……どうしたの？」
意外にも、そう問いかけてきたのはAの方。
「……Aこそ」
初夏に吹く風は、どこか優しい。
二人の髪を揺らした。
「…………この前、ごめんね」
ずっと、謝りたかったんだ。
泣くAを初めて見て。
その後、ありえないくらいの焦燥感に襲われた。
ごめんね。
もうしないよ。
絶対に、もう泣かせるようなことはしないから。
「だから…………避けないで」
しばしの沈黙が流れた。
Aが横で息をつく気配がする。
静かに、Aは話し出した。
「……あの時、徹にキスされて、すごく嫌だった」
その言葉が、ズキンと俺の胸を刺す。
「うん」と、小さくだけど返事をして次の言葉を待った。
「……徹に…他の女の子にするようにキスされて、嫌だった」
「…………え？」
どういう、意味？
パッと顔を上げるけど、Aはこちらを見ず、宮城の町を見ていた。
とても、広く見える。
「……私にとって、徹と岩泉は特別で……徹と岩泉にとっても、私は特別だってわかってた」
――――そんなことは、わかってたの。
Aは、絞り出すように、声を出した。
「私は、徹の特別だって思ってて……だけど、あんなふうに、他の子たちと同じようにされたことが、すごく悲しくて……」
「………………」
「でも…………」
Aの声が、震えてる。
顔を背けた彼女が、泣いているんだと気づくのに時間はかからなかった。
「でも……それなのに、嬉しいって思っちゃう自分が、すごく、嫌で……っ」
――――え……？
Aの言葉をゆっくりと理解していく。
ねえ、A。
「それ……って……」
「…………っ…」
振り向いたAの顔は、涙でぬれた、見たことのない表情をしていた。
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あお - この作品ほんと大好きです！ (2022年9月22日 22時) (
レス) @page41 id: 452b671271 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 泣きましたありがとうございます好きです（） (2021年5月4日 16時) (レス) id: e7d206068b (このIDを非表示/違反報告)
ｲｴｰｰｰｲ - めちゃ好きぃぃぃぃい大好きぃぃぃぃいあ゛あ゛っっっ (2021年3月31日 11時) (レス) id: 8c04e9d971 (このIDを非表示/違反報告)
ピ(プロフ) - はああぁぁぁぁぁぁぁぁ尊い尊い尊い尊い死ぬ (2020年10月25日 18時) (レス) id: 200e605a50 (このIDを非表示/違反報告)
はー - 心臓爆発するぐらいキュンキュンした！ (2019年9月20日 19時) (レス) id: 413b05e864 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼空
| 作成日時：2014年9月27日 12時
