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29.敵わない。 ページ29

しばらく経ってから、ハッと我に返った。


部屋の中を覗くと、元の位置に戻っている二人。


それを確認すると、俺は部屋に入った。




「おまたせー」


「ありがとー、遅かったね」


「……ああ、ごめん、トイレもついでに寄ってたんだよね」



へらっと笑うと、Aは「そっかー」と頷きながらお菓子を手に取った。




目の前には、何食わぬ顔でお菓子をバリバリと頬ばる岩ちゃん。




「…………」




――――ねえ、岩ちゃん。



さっき、Aと何してたの?





聞けばいいんだよ。


岩ちゃんだよ。

小学生の頃からずっと一緒にいる幼馴染。



なのに、なんでこんな簡単なことも聞けない?





…………そうだ。



怖いんだ。



聞いたら、俺が聞きたくない答えを言われそうで。




なんで怖がってるんだろう。




わからないままじゃ、嫌だ。





「……及川、どうした?」



「……!!」



岩ちゃんが俺の顔を覗きこんでいた。


気づかないくらい、俺は考えこんでいたようだ。




「ごめんごめん、ボーッとしてた」


「…そうか?……あ、そうだ、ここなんだけどよ」





どうしたら、わかるの。




なんで俺、こんなに嫌悪感を抱いてるの。






岩ちゃんとAが二人でいたことが、こんなに嫌なんて初めてだ。





二人にもこんなの失礼だ。




でも、一度そう思ってしまったら、簡単には消えなくて。





「…………あ、悪い、俺母ちゃんにスーパー寄ってくるように頼まれてたんだわ、そろそろ帰るな」






そう言って岩ちゃんが帰ることに、喜んで、ホッとしている自分がいた。







「そうなの?岩ちゃん。ダメじゃん忘れちゃ」


「うるせ。んじゃあ帰るな、サンキュ」


「ばいばーい」




Aと二人で手を振って、岩ちゃんを見送った。






静かになった途端。









「――――んで?今度は何隠してるの、徹?」







ノートから目を離さずに、だけど当然のように言った。






「すぐわかるって、言ったでしょ」




顔を上げて俺と目を合わせると、フッと笑った。








――――やっぱり俺は、彼女には敵わない。









「……さっき……岩ちゃんと、何してたの?」

30.何かが。→←28.何を躊躇う。



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あお - この作品ほんと大好きです! (2022年9月22日 22時) (レス) @page41 id: 452b671271 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆゆ(プロフ) - 泣きましたありがとうございます好きです() (2021年5月4日 16時) (レス) id: e7d206068b (このIDを非表示/違反報告)
イエーーーイ - めちゃ好きぃぃぃぃい大好きぃぃぃぃいあ゛あ゛っっっ (2021年3月31日 11時) (レス) id: 8c04e9d971 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はああぁぁぁぁぁぁぁぁ尊い尊い尊い尊い死ぬ (2020年10月25日 18時) (レス) id: 200e605a50 (このIDを非表示/違反報告)
はー - 心臓爆発するぐらいキュンキュンした! (2019年9月20日 19時) (レス) id: 413b05e864 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼空 | 作成日時:2014年9月27日 12時

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