魔法界への第一歩 ページ9
翌日。
「ついに来たーっ！」
私は既に、「漏れ鍋」という小さなパブに着いた時点で歓喜の叫びをあげていた。母と父を見失わないように駆け足でついて行き、パブを通り抜けた先は壁に囲まれた小さな中庭になっていた。ごみ箱と雑草が二、三本生えているだけの、ごくごく普通の庭だ。
母が杖を取り出して壁のレンガをいくつか叩いた。
「三つ上がって横に二つ。ちょっと下がって？」
母が最後に壁を三度叩くと、急にレンガがくねくねと揺れて動き出した。瞬きした途端、目の前にはアーチ形の入り口が立っていて、向こうには石畳の通りが曲がりくねって続いている。私の口からは思わず感嘆の声が零れた。
「うわぁ…」
「ダイアゴン横町へようこそ」
ニコーっと笑う両親。アーチは見る見る縮んで、また固いレンガの壁に戻るところだった。
周囲を見渡すと、沢山の小さな店が並んでいる。
杖が売っている店、アイスクリームパーラー、書店、魔法動物ペットショップ、ふくろう専門店、箒のショーウィンドー、鍋屋、薬問屋、…などなど。お店や商品、買い物客をぐるっと見回した。羽ペンや羊皮紙、薬瓶、月球儀、望遠鏡、それから見たことのない不思議な銀の道具まで。目に映るもの全てがキラキラ輝いて見える。早く買いたいな。
「だが、まずは金を取ってこねばならん。グリンゴッツだ」
父は私の心を見透かしたように言うと、目の前の建物を見上げた。ひときわ高くそびえる真っ白な建物だ。磨き上げられた扉の両脇に立っている生き物はなんだろう。
頭を捻る私を見て笑いながら、父はひそひそと言った。
「あれは子鬼で、ここは子鬼だらけだ。グリンゴッツでは地下金庫の管理、マグルの通貨との両替、財宝の発掘などを行ってる。父さんはあまり好きじゃないな、うん」
苦々しい表情を浮かべる父。過去に何かあったのかと疑問が浮上しそうになるがこの際置いておくことにする。
二番目の銀色の扉には何やら言葉が刻まれている。
“見知らぬ者よ 入るがよい
欲のむくいを 知るがよい
奪うばかりで 稼がぬ者は
やがてはつけを 払うべし
おのれのものに あらざる宝
わが床下に 求める者よ
盗人よ 気をつけよ
宝のほかに 潜むものあり”
…どういう意味だ？とにかく危険そうなのは分かったけど…。
銀色の扉の先は大理石のホールだった。沢山の子鬼が群がっている。私たちはカウンターにて、手の空いている子鬼に話しかけた。
「風花・上陰の金庫から金をとりに来たのだが」
ラッキーアイテム
憂いの篩
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヘルガ(プロフ) - 笹野紗空さん» お父さんに会うことは確実なんですけど、どうなるかはご想像に…wこれから更新行ってきます、コメありがとうございました！ (2014年8月18日 15時) (
レス) id: 8c120b56a9 (このIDを非表示/違反報告)
笹野紗空(プロフ) - この小説大好きです！第二夢主さんがお父さんに合ったらどうなるのやら…ｗ 更新おつかれさまです！がんばってください (2014年8月12日 10時) (レス) id: db97eba549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヘルガ | 作成日時：2014年8月7日 12時
