６・きみのなまえ ページ7
「…うん、 ま、及第点って所かな」
『ふええ〜！こんだけ書いてえ!?』
「これだけ書かされたのは自分が下手なせいだと自覚しなよ」
『あ、あのね！こっちも練習したよ！』
「ん？」
『ザックの名前！』
「…A、自分の名前も満足に書けない癖に人様の名前の練習なんてしてるヒマあんのかよ」
『ううっ…ごもっともです…』
「まぁ、こっちも及第点」
『ほんと！』
「発音もそこそこ聞ける程度にはなったしね。
まだちょっと舌足らずだし、特にＬとＲが心許無いけど」
『上げたり下げたり忙しい奴…』
「使い方が違う。忙しいはこっち」
『むぎゅう』
『…あのね、ザック』
「なに」
『あたしの名前…ザックが付けてくれたでしょ？』
「うん」
『本当はね、違う名前があったの』
『でも思い出せないの』
『あたしがあたしを証明する為のもの…全部忘れちゃったの』
『どうしたらいい？ザック……』
「…君はAだ。僕がそうだと定めた日から」
「でも名前なんてものはね、たかが識別番号なんだよ」
「存在証明だって、与えられるものじゃない。自分で作るものだ」
「だから、作ったモン勝ちさ。A」
「君が誰かなんて問い掛けるような奴はぶん殴ってやれ」
「君は誰だなんて決め付けるような奴は蹴っ飛ばしてやれ」
「もし一人が心細けりゃ…僕がついてってやるよ」
「僕らは血が繋がらなくったって、兄妹だもんな」
『―――うん』
「さて、ご機嫌如何かな？」
『……ふつう！』
「お腹のだよ」
『…お腹空いた！』
「では、ニコラスの秘密の棚からこっそりクッキーを頂戴しよう」
『ええ〜？そんな事出来るの？ザック』
「勿論。 錬金術と魔法は似て非なるもの。
だが魔法使いの世界で生きる僕らにとっては切っても切り離せないものでもある」
『…！ザック、もう魔法が使えるの？』
「秘密だよ？」
『秘密だね！』
(ひみつのないしょばなし)
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作者名：うすしお | 作成日時：2019年10月8日 9時
