おまじない【CS】 (ページ48)

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≪鮮明な記憶≫

忙しくなるからと言ってずっと会えないわけではないと思っていたし、少し寂しくなる程度だと思っていた。
9月1日になったばかりの時間帯に兄が死亡したという情報が入り、家中がザワザワしているところで1人現場を把握できずにポツンと立っていた。どうして良いのかもわからずにいると、それを悟った父が「一緒に行くか？」と言ってきた。母は止めたが、本能的に行かねばと思った。

家から車を走らせ、いつも動いている風景がこの日だけはに止まっているように映った。
寝て起きたばかりで思考はまとまらないのに、頭だけは妙にクリアで、変な感じがした。

父に声をかけられるまでは車が止まったことにすら気づかず、腕を引かれるまで動くことすらできなかった。自分の体が自分のものではないような感覚だった。

兄が横たわっていたのは、少し公道に近い森の中だった。
裂け目自体はこの森のもっとずっと奥の方にあったようだけれど、すでに閉じた後であった。

兄の近くには切れてしまったミサンガが遠くに落ちていた。おそらく依代が壊れたことによって奴らと認識することができなくなり、戦う術も失い、見えなくなってしまった奴らに無惨にもやられてしまったのだろうとわかる。
ミサンガが落ちていた場所の近くにはバッグが落ちており、免許証などを確認したところ一般人の女性であると判明した。女性を庇った際に奴らからの攻撃でミサンガが切れてしまったのだろう。依代が壊れてしまったためおそらく都市伝説も死んでしまったのだ。

何かの見間違いではないかと思いたくて、切れてしまったミサンガと自分のミサンガを何度も何度も比べて見たり、もう開かない目を無理やり開けて瞳の色を確認したりしていた。
見間違いだと信じたくて縋ったその行動は、全てが紛れもない兄「真田結」であることの証明となってしまった。

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