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≪過去≫
2007年8月7日
真田家の次男として、この世に生を享けた。
濃藍色の髪と鳩羽色の瞳、わけもわからず泣いている様子は結が生まれた時と全く同じであった。
生まれながらの顔立ちさえも、なんだか結に似ているようが気がして、力なさげに「デジャブだ」と呟く和奏がいた。
思いの外早く生まれてしまったために出産に立ち会うことができなかった惟臣はがくりと肩を落としたが、すぐ生まれてきた子を抱いて笑顔を見せた。
小さい頃はとても泣き虫で、結の後ろをついて回るような子供であった。家系の事情でご近所付き合いが少なく、小学校に入学するまでは友達もいなかった。
4歳になる頃にはボーダーメーカーとしての基礎知識と学び、体力的な面の訓練が始まった。普通はこの年齢から幼稚園や保育園に行くものだが、ボーダーメーカーの勉強を優先したため、通っていない。結と一緒に坂道をダッシュしてどちらが速いかを競うのが日課だった。
7歳で小学校に入学し、他の子が騒いでいる時に1人だけ静かだったため、先生からは「手のかからない良い子」として見られるようになる。
2年生の頃に字が汚いこと、何の遊びでも大抵強いことからいじめに遭い、泣きながら家に帰ってくることになる。この頃から母と字の練習を始め、結がたびたび澪の教室を訪れるようになった。
4年生になり、本格的に体力作りや体つくりに力を入れるようになった。今までの坂道ダッシュはもちろん、軽い筋トレなども入ってきた。
澪が6年生の頃、結は高校一年生になったため、ボーダーメーカーとして仕事をするようになった。この時に、今依代になっているお揃いのミサンガをもらった。ずっと外していないし、大事に扱っている。
結の死亡報告を受け、しばらく学校に行けなくなった。
葬式にもまともに出ることができず、毎日毎日結の部屋で泣いていた。この時から完璧に学校に登校することはなくなり、家で勉強に励み、体つくりに専念した。卒業式にも出ていない。卒業アルバムも未購入。
後半から学校に行っていなかったため、気まずくなることを想定して母が中学受験を進める。見事合格し、自転車で20分ほどの中学校に通うことになる。
しかし、此処でもあまり学校に通うことはなく、出席日数は少ない。休んでいた期間はもちろん鍛錬と勉強。結が死んでからというもの、何かがおかしくなったかのように感情を表に出すことが少なくなってしまった。人前で泣くなど論外。小さい頃の泣き虫が嘘のようであった。
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