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「Aさん、ぼくの兄のこと、やっぱり知ってるんですね。いえ、なんとなくですけど、知っているような気がしていました。勘ってやつでしょうかね。でも、Aさんも、何も見ていなかったのでしょう?怒っていないか?…そうですね、怒っていないと言ったら嘘になります。でも、今ここでAさんを責めたところで、兄は戻ってこないです。大丈夫ですよ。秘密はそのまま、しまっておいて下さい。誰にも話さなければ、いつかは自分を忘れてしまいますから。」
「このミサンガは、ぼくの兄が作ってくれたものです。ぼくはこれを依代にして都市伝説と契約しています。…そうですね。ミサンガは一般的に足につけている場合が多いですが、腕につける人もいますよ。兄がそうだったので、ぼくもそうしました。『2人は離れていてもずっと一緒』と言って渡してくれたので、兄と少しでも同じようにしたかったんです。ミサンガってある程度の年数が重なると自然と切れるのが普通だと思うのですが、切れるどころがほつれるようなことも無く4年間経過してしまいました。でも、切れない方がぼくにとっては好都合です。今はこの世にいない兄と、ずっと繋がっていられる唯一の方法ですからね。これさえあれば、ぼくはどんなに辛いことがあっても乗り越えられます。」
「兄は真田家の教え通りに、一般人を守って亡くなりました。本当に、素晴らしい生き様だと、家族も親戚も言っています。みんな、それまでは「才能がない」とか「真田家の恥」とか言っていたのに、手のひら返しが酷いんです。あんな家が嫌いです。こんなことなら、真田になんて生まれたくなかった。そうしたら、ボーダーメーカーにならずに済んで、今でも幸せに暮らしていたはずで…。結兄さんは、死ぬ必要もなかったのに…。…ごめんなさい、一回話してしまうと、もう止まらなくて…。ああ、ごめんなさい結兄さん。また泣き虫はぼくに戻っちゃうよ…。」
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