【QK】一番近くて、遠い場所。〔Fkr〕 (ページ5)

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Side Fkr

俺には最近、気になっていることがある。
それはもちろんAのことで。

ため息つきながら仕事をしてたり、いつもは酔わない酒にベロベロになったり。
なんで俺に相談してくれないかな？
聞き出そうとしてもなんでもないの一点張り。
ちっとも話してくれないんだ。

「福良ぁ、野菜食えよぉ。」

俺はどこかで酔ってくれたら少しは話してくれるんじゃないかって、期待してた。
でもそんな期待はどこへやら、今俺の目の前にいるのはアルコールによって話が通じなくなったA。

「何？A珍しく酔ってんじゃん。」

半分皮肉をこめてからかってみると、あからさまに不服そうな顔をして机に突っ伏す。
かと思えば今度は伊沢の方を向き、

「いざぁー、私こんなとこいていいのかなぁー。」

ポロっと俺が一番聞きたかった言葉をこぼす。
こんなとこ、とはどういうことだろう。

QuizKnockの居心地が悪いのだろうか？
はたまた、Aお得意の自信のなさの現れだろうか？

「何急に。」

伊沢が割とガチトーンで聞き返すが、もはや返事は帰ってこない。

「んんー、ふふぅ…」

ほら、水だよとAの世話をする伊沢を横目に手元のお酒少し啜る。
今思えば、Aはいつもそうだった。
ずっとずっと、1人で抱え込む子だった。

俺とAは幼馴染。
幼稚園、小学校、中学校と同じだった。
高校で別々に別れたけど、大学で上京したときに偶然であって交流が再開した。

大学卒業後も(俺は中退だけど)月一で飲みに行くくらい仲が良かった。

Aはとんでもないブラック企業に就職してしまったらしく、会うたびにやつれていくのを目の当たりにした。
だから俺は、伊沢に相談してQuizKnockに入社してもらったんだ。
単純に仕事ができるからずっと入ってもらいたかったのもあるけど。

それから随分経つけど、Aの精神状態も良くなったし、余裕を持てていると思っていた。
だけど、違った。
今のAに全然余裕なんてない。

俺はAのことなんも知らない。
頼りにされてすらない。

その事実を認めたくなくて。

「福良さん、最近Aさん可笑しくないですか？」

「そうなんだよね…」

伊沢も感じていたか。
ねぇ、君は何をそんなに抱えているの？

綺麗な髪を優しく撫でながら俺は考え続ける。

俺、Aの一番だと思ってたんだけどな。

唯一の一番だって。