16 ページ17
Side Fkr
俺の焦る気持ちとは裏腹に道は俺を迷わせる。
息は完全に上がって、大きく肩を上下させ呼吸をする。
やっとの思いで目的のゲーセンにきた時には、日は斜めになっていた。
でも、俺の期待は全く外れ。
あたりにはAの姿はない。
今になって考えてみれば、キャリーケースを持ってゲーセンに入るわけがないのに。
がっくりと膝を落とし、また俺は涙を目に溜める。
羞恥心なんてどこにも生まれないぐらい、声を張り上げて泣いて。
もうなんでも良かった。
Aさえいればどんなことになってもいい。
最後まで俺はAを守れなかったという事実が胸を縛って離さない。
「大の大人がこんなになって泣いて。恥ずかしいじゃん。私の名前、呼ばないでよ。」
どこからか、そう聞こえた気がして。
余計に苦しくて。
「だから、泣くなって。私、ここにいるんだよ？」
そう言いながら誰かがそっと俺の頬に触れた。
驚いて顔を上げればその手の主は
紛れもない、俺の一番会いたい人で。
「イカさん見たら、ここ来ちゃって。」
俺の前にはAがいて、今、間違いなく話してるんだ。
「そんな…A、どうしたの…？」
涙でうまく喋れないけど、やっとのことでそう問いかける。
もしかしたら、幻なのかもなんてぼんやり思って。
「ゲーム、しにきただけだよ。」
「嘘、でしょ。こんな荷物持って。」
「うん、嘘。」
そう言って、目の前の彼女もまた涙ぐむ。
「さよなら、したかった。けど、辛くなっちゃった。」
いつかこんな会話をしたよね。
でも、その時とは全然状況が違うけど。
震えたままの膝に力を入れて、目一杯Aのことを抱きしめる。
それでやっと、本当にAなんだって思えた。
「さよならなんて、俺らにいらないだろ。だって、そんなものないんだから。俺さ、Aのこと好きだよ。」
そっと、腕を回し返しながらAは涙を落とす。
「離れる決心をしてから、私も福良のことが好きだって気がついた。ごめんね、福良。苦しい思いをしてるのは私だけじゃなかった。」
「何年片思いしてると思ってんの？」
「灯台下暗し、なんだって。あ、東工大下暗しかも。」
「なんだよそれ笑」
「なんでもいいじゃん。」
段々と夜を迎える空の中、俺ら2人だけは朝日を迎えようとしていた。
ーーーーー
完結し次第、読者の皆様にとても大切なお話がございます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：星ノ瀬豹&歌音 | 作成日時：2022年7月31日 18時
