斬るのも刺すのも御手の物其ノ弍 (ページ3)

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念仏2行目ページ3

さらに、右へ足を進めていくと…

ｶﾞｯ!!

『～～～っ！！』← 声にならない

またもや、右足の小指を柱にぶつけたようだ。

『くっそぉ…今度は右に行き過ぎた…
もう、歩くのも恐ろしいくらいだ…』

両の手をつき、ペタペと床を手探りしながら部屋を探すことにした。

すると…

「おや？そんな所で何をしているんだい？」

『その声、にっかり青江か？』

「ふふ、そうだよ。
それにしても、君はこんな夜中に1人部屋の前で何をしていたんだい？
石切丸が短刀達にせがまれて、よくやってあげているお馬さんごっこかな？
それなら、夜ではなく昼間やってあげたらどうだい？」

『そんな訳あるか！！
というか、お前はいつからそこに居たんだ？』

「そうだね…君が柱に左足をぶつける辺りかな？」

最初からじゃないか…(恥)

『そんなに最初の頃から居るのなら、手を貸してくれても良かったではないか！』

「ふふ、ごめんね。
君の動きがとても面白かったから、つい。」

『つい、ではない！オレたち太刀にとって夜は天敵なんだぞ！！
お前だって知っているだろう？太刀の夜目が効かないことくらい。
お前たち、夜目の効く脇差や短刀、打刀に同じ感覚で、同じものを見ろ、と無理難題を強いる訳にはいかないが、真っ暗闇の中を一人で部屋を探す孤独さが分かるか！？分からないだろう！？
相当、恐ろしいぞ！？』

「ふふ、ごめんね。」

『ごめんで済むなら、今頃憲兵なんかは世間に出回っていない！！』

「しーっ、他のみんなが起きてしまうよ？」

『お前のせいだろう…』

「ふふっ」

現にオレは、にっかり青江の声のする方を向いてはいるが、にっかり青江の姿はオレの目には映っていない。

そして、今、どのくらいの距離で、近いのか、離れているのかさえも分からない。

立っているのか、座っているのか…

こいつが、ほんとに【にっかり青江】なのかさえも、今のオレには分からない。

ただ、声だけがオレの耳に届いている状況だ。

もし仮に、こいつがにっかり青江では無いとしたら、この状況は相当危険なものである。

逃げたくても、逃げられない。
どこに道があり、どこに部屋があるか、見えないオレでは分からない。

暗闇で見えない事とはただの恐怖なのだ。

「ねぇ、部屋は今君の真っ正面にあるよ。
それにしても、その格好はすごいね。
自分の部屋の前で四つん這いになって手を伸ばしてるって……ぷっ！！」

『…後で覚えておけよ？青江』