斬るのも刺すのも御手の物其ノ弍 (ページ13)

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念仏１１行目ページ13

本丸へと帰る途中、皆疲れているので大きな楠の下で休憩をすることとなった。

皆、肉体的にも精神的にも疲れている。
帰りの途中で、転々と転がっている侍の死体を埋葬したのだ。
そいつらの死に方があんまりにも無残な死に方をしていたので、見ていられなかった。

首を跳ねて潰されていたり、目玉を抉られていたり、服を脱がされて裸だったり、腹が裂けていたり…。

この人間達のような、ある程度の犠牲ならば、歴史抑制力が働いてくれる。
だが、彼らの死体を見つけておいて、放って置くのは余りにも偲びない。
だから、残り少ない体力を彼等の埋葬に使った。

「あなたも律儀ですよね。」

『何がだ？宗三。』

「埋めるだけではなく、わざわざ墓まで作って、そのうえ、線香も貰って来て花もまで摘んで…」

「そこが、八丁殿の良い所でもあります故、お気になさらぬよう。」

『そうだな…だが、宗三が言うようにちと骨が折れたな…』

「早く弟達の顔を見て癒されたいです…」

「拙者も兄弟の無事を確認したい…」

「ああ、俺も大包平の馬鹿っぷりを見て笑いたいものだ。」

「江雪兄様の無事を確認したいですね…小夜のほっぺをいじって癒されたい…」

『オレは…』

…あ、オレは…
誰の元へと行けばいいんだ…？

「八丁殿？」

『どうした、吉光の？』

「いえ、ただ、少し虚空を見るような…」

『はっはっはっ、なぁに、言おうと思っていた事を急に忘れただけさ。問題ない。』

「そうでしたか。
いきなり言葉を区切るので、何かと思いましたぞ。」

『いやいや、悪いな。
すぐ忘れてしまうってことは、きっと大したことではないのさ。』

…大丈夫。
オレを待っていてくれるのは本丸の皆だ。
大丈夫…大丈夫だ。

きっと、大丈夫だ。