今日俺合作短編集！【今日から俺は！！】

○○しないと出られない部屋 （ 片桐 ） ・ ミカド ページ17

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『あなた達は相手を泣かさないと出られない部屋に入ってしまいました。30分以内に実行しないと永遠に出られません』







「......」
「......は？」


いやいやいや、何ですかこれ。

目を開けたら知らない部屋にいて、鍵が掛かってるのか扉は開かなくて、この閉じ込められた状況を打破するには相手を泣かさないといけない、とか。友達に言っても笑われちゃう。私だって他人事だったら腹抱えて笑ってるもん。

しかも、私と一緒に仲良く閉じ込められてるのあの開久高校の番格片桐智司だよ。 泣かせるなんて絶対無理でしょ、寧ろ私は泣かされる方だよ。ってか何で居るんですか。お陰で超怖っすよ先輩。死んでも良いですか。


「おい」
「ヘイッ！ どうしやした親方！」


一人無言を貫く片桐くんに背を向けながら脂汗を滝のように流して普段使わない思考回路をフル可動させていれば、いきなり声を掛けられ大袈裟に肩が跳ねた。恐る恐る片桐くんに振り返る。


「変に考えるな、A。無駄な力を消費するだけだ」


ポケットに手を突っ込んでいる片桐くんはそう言ってくれた。

流石、としか言い様がない。彼はこの不可解な状況に動じずただただ無表情を貫いている。ゴゴゴゴゴと言う恐ろしい効果音が似合うその立ち姿は凄まじい程迫力有り過ぎて、取り敢えず死んでも良いですか。

口から自分の形をした魂が天に向かって飛び出してきそうになるのを必死で堪えながら一歩崩れかけの勇気を振り絞って片桐くんに言う。早くここから出して！ へるぷみー！


「じゃ、じゃあ どうすれば良いのかな」
「“相手を泣かさないと出られない”って書いてあっただろ......って、何泣いてんだ」
「あ！ もしかしてこれで扉開けちゃった感じ？」


泣けば出られると聞いて直ぐに涙をどばどばと落とす私は若干引いた視線を送る片桐くんの横を素早く通って部屋の扉を開けようとドアノブを掴むもなんてこったパンナコッタ。微動だにしないなんて。



「ん？ あれ？ あれあれあれあれ？」



何度も何度も回そうとするけれど、その扉が開かれることはない。私の努力は無駄なのか、それとも私はやはり片桐くんの目尻に透明なそれを流させないといけないのか。

絶対無理だろ ！！

心の中で叫びながらその愚かな行動を続けていればドアノブを掴む私の手の上に大きな手が添えられた。



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